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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
妊娠分娩合併症1 妊娠中に深部静脈血栓症を発症した妊婦3例の妊娠・分娩管理
浅香 亮一1), 長田 亮介1), 飯ヶ濱 悠美1), 井田 耕一1), 樋口 正太郎1), 堀沢 信1), 小原 久典1), 菊地 範彦1), 大平 哲史1), 芦田 敬1), 金井 誠2), 塩沢 丹里1)
信州大学産婦人科1), 信州大学医学部保健学科2)
血栓症既往妊婦や妊娠中に深部静脈血栓症を発症した妊婦の妊娠・分娩時の対応については,全例IVCフィルターを挿入して管理するといった報告もあるが,確立された方法はない.当院では最近1年間に妊娠初期から中期にかけて発症した深部静脈血栓症を3症例経験したのでその管理法について報告する.症例1は28歳の初産婦で妊娠9週に両下肢の深部静脈血栓症を発症し,ATIII欠損症と診断された.妊娠中は未分画ヘパリンおよびATIII製剤を使用したが,妊娠35週の下肢静脈エコーで右浅大腿静脈に浮遊血栓を認めたため,陣痛が発来した妊娠38週3日にIVCフィルターを挿入し,翌日無事経膣分娩となった.症例2は34歳の初産婦で妊娠18週に左下肢の深部静脈血栓症を発症し,ATIII欠損症と診断され,妊娠中は未分画ヘパリンおよびATIII製剤が投与された.妊娠35週時の造影CTおよび36週時のエコーで左浅大腿静脈壁に器質化血栓を認めたが新たな血栓形成がないためIVCフィルターは挿入しない方針とし,妊娠40週3日に無事経膣分娩となった.症例3は28歳の初産婦で妊娠11週に左下肢の深部静脈血栓症を発症した.プロテインS活性が36.8%と低値であったが,それ以外の血栓性素因は認めず,未分画ヘパリンにて管理された.妊娠33週の下肢静脈エコーと妊娠36週の造影CTで血栓は認められなかったため下大静脈フィルターは挿入しない方針とし,妊娠39週5日に無事経膣分娩となった.妊娠中に発症した深部静脈血栓症に対しては,十分な抗凝固療法を行うこと,また分娩方法に関しては妊娠後期に造影CTおよび下肢静脈エコーにて血栓症の評価を行い,リスクに応じて下大静脈フィルターを使用することが重要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
272-272, 2009
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