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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
中高年女性の医療 小腸瘤にメッシュを用い,ダグラス窩ヘルニア門を閉鎖した一例
水島 大一1), 吉田 浩1), 竹内 梓1), 香川 愛子1), 佐藤 綾1), 岡本 真知1), 石川 雅彦1), 平原 史樹2)
横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科1), 横浜市立大学附属病院産婦人科2)
【症例】84歳3経妊3経産【現病歴】14年前に子宮脱の診断で,腹式子宮吊り上げ術施行.8年前,直腸瘤のため後腟壁形成術施行.その後ペッサリーを用いていたが,挿入不可能となり1年前に手術目的で当院紹介受診.【来院時の状態】ダグラス窩は直腸腟中隔を解離させながら,トンネル状に落ち込んでおり,最深部は腟口と肛門の間にヘルニア嚢を形成していた.直径は8cm大で内部には腸が存在し小腸瘤と診断.【治療経過】ヘルニア嚢巾着縫合及び後腟壁形成術を施行したが,術後5ヵ月で同様のヘルニア嚢が再発した.そこで,ダグラス窩ヘルニア門を直接メッシュで閉鎖する方針とした.楕円形のポリプロピレンメッシュを漏斗状に整形し,腹式にダグラス窩へはめ込み周囲腹膜と固定.会陰よりヘルニア嚢を数回の巾着縫合で閉鎖し終刀とした.【考察】高齢だが短期間でヘルニア嚢が直径8cmで増大し,嚢内で癒着や腸閉塞が生じる可能性があるため手術適応とした.術式選択は,腟脱(直腸瘤)がないこと・子宮吊り上げ術後であることが影響している.ダグラス窩ヘルニアは,腟ではなく,腟背側の直腸腟中隔を解離させている.従って,腟壁の膨隆がなくTVM−Pは不適当であり,腟閉鎖ではヘルニア門を閉鎖できない.また,子宮が恥骨の頭側で腹壁に固定されており,仙骨子宮靭帯は過伸展・痕跡的で,靭帯縫合法も困難であった.以上より上記術式を選択した.本症例では,漏斗状にしたメッシュをヘルニア門へ挿入して,腹膜と縫合したのみであるが,再発を認めていない.非典型的な骨盤部ヘルニアにはポリプロピレンメッシュによる補強も有効な一法と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
286-286, 2009
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