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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
良性卵巣腫瘍 診断の確定に苦慮した巨大卵巣腫瘍茎捻転の一例
井谷 よしみ, 長嶋 武雄, 松本 光代, 山本 美希子, 小林 由香利, 藤村 正樹
東京医科大学茨城医療センター産科婦人科
腹部に巨大腫瘤を認める急性腹症の場合,卵巣腫瘍の茎捻転なのか,腫瘤の微小破綻等に伴う局所的腹膜刺激であるのかの判断が困難な場合がある.今回我々は,診断の確定に非常に難儀した症例を経験したので報告する.症例は53歳女性,2回経妊2回経産.急激な腹痛を主訴に近医受診し,CTにて上腹部から下腹部を占拠する巨大腫瘤を認め当科紹介受診.初診時,腹部全体は比較的柔らかかったが,腫瘤部の反跳痛は著明であった.体温38.0℃,WBC15200,CRP16.2と炎症所見著明.腹部超音波検査では腹部右側やや頭側に径20cm大の多房性腫瘤を認め,卵巣腫瘍の茎捻転もしくは腫瘤破綻に伴う腹膜刺激症状の疑いにて緊急入院となった.入院後は疼痛に対してNSAIDsの投与にて経過を観察した.鎮痛剤投与にて一時的に疼痛は軽減するも基本的症状は改善されず,入院後第5病日に開腹手術試行.右卵巣は頭側に偏移し径約20cm大に腫大,時計回りに540°捻転していた.捻転の解除を行わずに右付属器切除術を施行した.術後経過は良好にて退院.病理検査では壊死所見が強く十分な診断は得られなかったが,残存組織の構造より悪性の可能性は低いと考え,外来にて経過観察している.本症例は腫瘤が骨盤腔よりやや頭側に位置していることから卵巣腫瘍の茎捻転を疑いつつも,腫瘍の大きさが大きく腹部症状があまり強くないこと,NSAIDsが著効することなどから,腫瘤の微小破裂に伴う腹膜刺激症状の疑いが捨て切れなかった.腫瘤が巨大であってもその位置によっては茎捻転を疑うべきである事が示された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
288-288, 2009
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