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第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
子宮体部腫瘍2 診断に苦慮した絨毛癌の1例
高木 崇子, 矢島 正純, 怒谷 麻理子, 上原 一朗, 山本 阿紀子, 松本 浩範, 岩下 光利
杏林大学産婦人科
絨毛癌はすべての妊娠に続発しうる悪性腫瘍であり,その30〜50%は胞状奇胎を先行妊娠とするが,それ以外の例も増加しつつある.今回我々は先行妊娠から長期間経過した後に発症したため,診断に苦慮した絨毛癌の1例を経験したので報告する.症例は51歳 2経妊1経産(25歳 正期産,35歳 人工妊娠中絶)過多月経を主訴に来院.内診で子宮は新生児頭大.血液検査ではHb9.3g/dl,LDH 150 IU/l.子宮頚部・内膜細胞診はいずれもclassI,MRIでは4cm大の腫瘤性病変と境界不明瞭な筋層の肥厚がみられ,子宮筋腫と腺筋症が疑われた.外来経過観察していたが,次第に出血量の増加と子宮の増大を認めた.Hb 6.9g/dlと貧血が進行し,LDH 313 IU/lと上昇.子宮内膜細胞診はclassIII,MRIにて子宮の腫瘍は増大し中心に変性・壊死を伴う不均一な像を呈しており,子宮肉腫疑いで開腹手術となった.単純子宮全摘出術+両側付属器摘出術を施行.術後測定した血中hCG値は77700mIU/ml,β-hCG580ng/ml,尿中hCG38411IU/lと高値を示し,摘出標本の免疫染色からも絨毛癌であると診断された.肺・脳・肝など他臓器への転移は認められず,補助化学療法としてEMA/Co療法を行った.治療後3ヶ月で血中hCG6.0mIU/ml,βhCG0.4 ng/mlと順調に低下を認めている.絨毛癌は子宮肉腫と同様に血管に富み血行性転移を起こしやすい腫瘍であるが,画像診断で明確に両者を鑑別することは難しく,子宮肉腫を疑う際には絨毛性疾患の存在も鑑別のひとつと考えるべきと思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
292-292, 2009
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