|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第118回学術集会(平成21年11月7日(土),8日(日))
【一般演題】
術式の工夫と麻酔 前置癒着胎盤症例の帝王切開・子宮全摘術の工夫:1例報告
藤木 豊, 佐々井 真純, 中村 佳子, 小倉 剛, 小畠 真奈, 濱田 洋実, 吉川 裕之
筑波大学産婦人科
症例は33歳2回経産婦,第2子を帝王切開分娩.他院にて妊娠管理されており,妊娠初期より度々性器出血があり前置胎盤が疑われていた.妊娠30週に膀胱壁へ浸潤する穿通胎盤を疑われ,妊娠31週3日紹介入院した.超音波カラードプラ法で子宮膀胱境界に豊富な血流を認め,MRIでも前置穿通胎盤を疑い,膀胱鏡で粘膜下に膨隆蛇行する血管を同定,膀胱筋層浸潤を伴う前置穿通胎盤と診断した.術前準備として自己血貯血と胎児肺成熟のためのステロイド投与,血管走行評価目的の非造影MRAngioを施行した.手術は妊娠35週を計画し,1期的に帝王切開後子宮全摘術を実施する方針とした.手術前日に硬膜外カテーテルを挿入,手術当日に全身麻酔後砕石位とし尿管ステントを留置した.子宮頸部を粘膜鉗子で把持し,その後大腿動脈より総腸骨動脈にクロスオーバー法でバルンカテーテルを留置し,さらに子宮動脈にマイクロカテーテルを挿入した.上腹部から下腹部まで正中切開し,子宮下節に拡張蛇行する異常血管多数を認めた.超音波ガイド下に胎盤より頭側で子宮体部縦切開し児を娩出した.胎盤は剥がさず子宮切開層を閉鎖し子宮全摘に移った.固有卵巣索と卵管をEndoGIAにて切断後,術中UAEを行い両側子宮動脈および胎盤の栄養血管にゼルフォームを選択的に注入した.膀胱を解放し子宮との癒着部を部分切除した後,リガシュアを積極的に使用し子宮全摘術を完遂した.術中出血量は羊水込み1,840mLで,輸血は自己血600mLのみであった.術直後に総腸骨動脈カテーテルを抜去,術後8日膀胱バルーンと尿管ステント抜去し,術後11日合併症なく退院.病理結果は穿通胎盤であった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 46(3)
309-309, 2009
|