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【症例報告】
卵管采に発生した異所性卵巣内膜症性嚢胞と診断した一例
木林 潤一郎※1), 石川 哲也※1), 安藤 直子※1), 市原 三義※1), 森岡 幹※1), 奥田 剛※1), 長塚 正晃※1), 岡井 崇※1), 九島 巳樹※2)
昭和大学病院産婦人科学教室※1), 同 病理診断科※2)
卵巣組織が正常卵巣と異なった場所に同定される事がまれに報告され,異所性卵巣と呼ばれる.異所性卵巣の報告は少なく,なかでも卵巣嚢胞を形成した報告は極めてまれである.今回我々は,異所性卵巣内膜症性嚢胞と診断した一例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は32歳1経妊1経産.妊娠初期に左付属器に10 cm大の内膜症性嚢胞を認めていたが,分娩時には嚢胞は4 cm大に縮小していた.分娩より1年が経過し,無症状であったが,加療希望により受診となった.MRI画像から左卵巣内膜症性嚢胞と診断し,腹腔鏡下手術を施行した.腫瘍は左卵管采から発生し,左卵巣との間に靭帯を介したつながりは認められず,また,卵巣は左右共に正常部位に確認できた.病理検査で,摘出した腫瘍にはごく一部に原始卵胞と思われる構造を認め,また血管に富んだ紡錘形核を有する卵巣間質細胞の集簇巣が認められることから,この腫瘍は卵巣であると考えられた.これらから,本症例は異所性卵巣に発生した内膜症性嚢胞と診断された.
Key words:Laparoscopy, endometriosis, ectopic ovary
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(1)
67-71, 2010
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