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【症例報告】
妊娠中に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発症した2症例
坂田 純, 村越 毅, 松下 充, 神農 隆, 石井 桂介, 成瀬 寛夫, 鳥居 裕一
聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター周産期科
2型糖尿病合併妊娠および妊娠糖尿病に,糖尿病性ケトアシドーシスを発症し,異なる経過をたどった2症例を経験した.症例1は31歳,3妊3産,20歳時に糖尿病と診断され,インスリンの導入をされていた.妊娠29週3日上腹部痛を発症し,翌日糖尿病性ケトアシドーシス(DKA:Diabetic ketoacidosis)と診断した.速やかに母体DKAの治療を開始したが,直後に子宮内胎児死亡を確認,2病日には母体の重症急性膵炎(grade III)を併発し,集中治療を要した.症例2は29歳,1妊1産,糖尿病の既往なし,父が糖尿病であった.妊娠30週に尿糖(3+)であり,妊娠32週の75 g経口ブドウ糖負荷試験にて高血糖を認め,妊娠33週2日にDKAと診断した.DKAの治療を開始し,頻回の胎児心拍モニターを行った.その後母児ともに状態は安定し,妊娠37週1日に3,520 gの男児を分娩した.一般に,妊娠中のDKAは母体救命を優先する重症疾患であり,胎児の状態は母体の重症度に依存して悪化するとされている.適切な初期評価と早期の集中治療および厳重な胎児モニタリングにより,母児の予後は大きく変化する可能性がある.
Key words:Diabetic ketoacidosis in pregnancy, Intrauterine fetal death, Acute pancreatitis, Type 2 diabetic mellitus, Gestational diabetes mellitus
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(1)
79-84, 2010
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