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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))

【症例から学ぼう】
不正出血


三上 幹男
東海大学産婦人科


症例:61歳 2経妊2経産
主訴:不正出血
月経歴:50歳閉経
現病歴:6か月前より出血混じりの水様性帯下を訴え他院受診.子宮頸部・体部細胞診検査するも特に異常を指摘されず,問題なしと診断.しかし症状が消失せずに,いくつかの病院,診療所を受診するも同様な検査結果で経過をみるように指示された.萎縮性腟炎と診断され腟錠を処方されたこともあった.しかし症状が持続するために不安になり,本院を受診した.
初診時診察所見:子宮は前傾前屈で正常大,両側付属器は触知せず.血性水様性帯下を認めた.
経腟超音波所見:子宮はほぼ正常大で子宮腔内に液体貯留を認め,左付属器に3cm大の充実性の腫瘤??を認めた.
検査所見:子宮頸部及び体部細胞診検査はともに陰性であった.
 さて初診時の検査結果が揃いました.みなさんはこの患者さんにどのように結果を話し,どのように指示をしますか?これが第1問です.このような形で本講演は始まります.
 不正出血を主訴に患者さんが来院した時に一番重要なことは悪性疾患,器質的疾患の除外です.悪性疾患を否定するためには,子宮頸部細胞診,体部細胞診などを必ず施行する必要があり,特に頸癌だけではなく,子宮体癌を必ず念頭に置く必要があります.体部細胞診は,分娩経験のない高齢の患者さんに行おうとする時,患者さんは大きな苦痛を伴い,行おうとする医師も躊躇してしまうことがありますが,必ず行う必要があります.さらに検査結果が陰性でも,本例のように症状が持続する時が問題となります.患者さんは先生方の「大丈夫,癌検診は子宮頸癌も体癌も問題ありませんよ」という言葉を聞いて安心する半面,その後も症状の持続する時には「あの先生の診断は大丈夫かしら」と思い,いろいろな病院に行って検査をしてもらうことになります.出血があり,持続する際は要注意です.頸部あるいは体部細胞診検査が陰性だったからといって,悪性疾患が完全に否定されているわけではありません.出血の原因は何か?これをきちんと把握すること,つまり,体の中で何が起こって出血しているのか,病態を把握し,それを患者さんに説明することが大切です.本講演では私が今までに経験した不正出血例で,先生方が一生の間に何例か遭遇するであろう,要注意の事例を提示,解説いたします.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2) 190-190, 2010


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