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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))

【教育セミナー1】
周産期診療と超音波


川鰭 市郎
国立病院機構長良医療センター産科


 産科診療における超音波検査は,内科医にとっての聴診器のような存在になってきている.近年は超音波検査機器の進歩も目覚ましいものがあり,立体的な胎児画像,いわゆる3D超音波画像もかなり普及してきた.超音波検査の発展が,産科周産期診療の発展そのものであるといっても,決して大げさではないと思われる.
 超音波検査画像が鮮明になればなるほど,問題となってくることがある.超音波検査の特徴として,検査を実施する医師の技術や経験がもたらされる情報を大きく左右してしまう点である.子宮内の胎児を評価する方法はいくつも紹介されているが,それらを実践するためには基本的な事項を無視することはできない.ここでは胎児を対象とする超音波検査の基本的な事項について,あらためて思い出してみたい.
 妊娠の診断法としてはいわゆる妊娠反応が施行されてきた.もっともそれ以前には動物を用いた診断法や,双合診による子宮の触知の微妙な違いによる方法しかなかった時代から考えると,妊娠反応は大きな進歩であった.しかし,妊娠反応は内分泌的に妊娠を診断しているのであり,必ずしも子宮内の胎児の生死を反映してはいない.そこで超音波検査による胎児評価を行うことにより,胎児の生存の確認,つまり流産を正確に診断できるようになったのである.
 出産予定日は妊婦の自己申告による最終月経から決められていたが,妊娠初期の胎児の大きさには個体差がないという特徴を踏まえて,胎児の頭臀長から在胎週数や出産予定日をわずかな誤差で特定することができるようになってきた.さらにこの頭臀長の計測値をもとに,胎児の発育を評価できるようになってきた.胎児の発育は,胎児の状態を把握する上でもっとも基本的で重要な情報である.発育が遅れている胎児であれば,それだけで胎盤機能や羊水量の問題も顕在化してくることになる.言い換えれば胎児の問題を明らかにするきっかけになっているのが発育の評価であるということになる.
 胎児発育をどのように評価するのか,胎児推定体重はどのような方法で得ることが望ましいのか,簡単なようで意外に知られていないところがある.
 今回の内容には妊娠初期の胎児の観察ポイントを明らかにするとともに,現在推奨される胎児推定体重計算式について,定められた経緯についても述べてみたい.
 日常診療で大いに重宝している超音波検査の基本を見直して,より効率の良い産科周産期診療に超音波検査を有効活用していただきたい.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2) 196-196, 2010


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