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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
異所性妊娠@ ・急性腹症で発症した右腎ジェロータ筋膜妊娠の一例
加藤 恵利奈, 千島 史尚, 市川 剛, 林 忠佑, 高田 眞一, 山本 樹生
日本大学産婦人科
腹腔妊娠は,子宮外妊娠の1.4%と稀な疾患だが,致命率は他の子宮外妊娠に比して高く,注意を要する.部位としてはダグラス窩が多く,稀な妊娠部位としてこれまで大網,肝,小腸間膜,大血管周囲,脾臓,虫垂等が報告されているが,今回右腎ジェロータ筋膜に妊娠した症例を経験したため報告する.症例は33歳女性.2経妊2経産.妊娠7週0日(最終月経より)に,心窩部〜右下腹部痛を主訴に近医を受診しCT上肝〜右腎間に一部造影される5cm大の腫瘤と骨盤内出血を指摘,腎腫瘍破裂を疑われ,同日当院紹介受診した.妊娠反応陽性,心窩部〜右側腹部,右付属器領域に圧痛,反跳痛を認め,超音波検査上子宮内に胎嚢を認めず.ダグラス窩穿刺にて血液が吸引された.血液検査上Hb10.6g/dlと軽度の貧血,尿中hCG 3782ng/mlと上昇を認めた.以上より子宮外妊娠,もしくは上腹部腫瘤の破裂を疑い,外科医師立合いのもとに試験開腹した.腹腔内出血約200ml認め吸引,子宮は軟化していたが,左右付属器,ダグラス窩,膀胱子宮窩,大網に明らかな所見を認めず.肝下面から右腎上極にかけて多量の血腫を認め,その中に胎嚢を認めた.右腎ジェロータ筋膜に付着部があり,出血が持続するため縫合止血し,洗浄し終了した.凝血塊中の妊卵と思われる組織は,病理組織像にて妊娠7−8週程度の初期の妊娠性産物と考えた.経過良好にて術後6日目退院.子宮外妊娠が疑われ,術前に妊娠部位が特定できない場合は,稀ではあるが上腹部も含め腹腔妊娠の可能性も念頭におき,緊急輸血の準備や他科との連携を整えた上で治療に臨む必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
206-206, 2010
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