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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
合併症妊娠@ ・妊娠中期に脳幹脳炎を発症した一例
田中 勝洋1), 小畠 真奈1), 関坂 みゆき1), 玉井 はるな1), 加藤 敬1), 野口 里枝1), 小貫 麻美子1), 小倉 剛1), 藤木 豊2), 濱田 洋実1), 吉川 裕之1)
筑波大学産婦人科1), 水戸済生会総合病院産婦人科2)
【はじめに】妊娠中の脳幹脳炎の発症はきわめて稀である.今回我々は,妊娠中期に脳幹脳炎を発症した症例を経験したので報告する.【症例】26歳の3回経妊0回経産婦.妊娠初期より前医で管理されていた.3日間の37℃台の発熱と上気道炎症状が見られた後,38℃台の発熱を生じ,妊娠19週0日に前医へ入院した.その後意識障害と痙攣が見られたため,同日当院へ救急搬送された.受診時,JCS:III-200,全身の硬直及びocular bobbingを認めたが,頭部のCT,MRIでは異常所見はなかった.血中肝逸脱酵素値の上昇と,脳脊髄液検査において蛋白細胞解離が認められたことから,ウイルス感染に伴う自己免疫性脳幹脳炎が疑われた.呼吸状態の悪化傾向に対し人工呼吸器管理とし,ステロイドパルス療法,抗てんかん薬の投与を開始,アシクロビル,抗菌薬を併用した.3病日には神経学的所見の改善が見られ,12病日に人工呼吸器を離脱,25病日(妊娠22週6日)に退院した.妊娠29週には抗てんかん薬によると思われる重症貧血を認めたものの,薬剤変更と輸血により改善し,妊娠38週4日に正常分娩となった.児は2500gの女児,Apgar scoreは8点(1分),9点(5分)であり,生後3カ月までに異常を認めていない.【まとめ】妊娠中に脳幹脳炎を発症した症例を経験した.脳神経内科と連携した迅速な診断,治療により母体への後遺症なく治癒し,児についても現在のところ問題なく経過している.母体の生命に関わる疾患については,胎児への影響を考慮して躊躇することなく,検査・治療を開始するべきであることが再認識された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
223-223, 2010
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