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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
合併症妊娠A ・子宮内胎児死亡を繰り返した遠位尿細管アシドーシスの1例
定方 久延1), 牛久 妙1), 瑞慶覧 美穂1), 平石 光1), 田村 友宏1), 笠原 慶充1), 勝俣 祐介1), 峯岸 敬1), 篠崎 博光2)
群馬大学産婦人科1), 群馬大学保険学科2)
(背景)尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis:RTA)患者が妊娠した場合,高血圧や腎機能低下を招きやすいこと,また胎児の骨発育への影響や胎児仮死を招く可能性もあるとされる.今回RTA合併妊娠の症例を経験したので報告する.(症例)2経妊2経産.既往:12歳時より低身長を認め,15歳時に遠位尿細管アシドーシスと診断.第1回妊娠:妊娠18週頃より2週間ほどの胎児発育遅延を認めていた.妊娠21週2日に子宮内胎児死亡と判明.児は170g(-3.7SD)であった.胎盤病理では一部に梗塞を認めた.第2回妊娠:妊娠17週より1週間程度の胎児発育遅延を認めていた.妊娠19週,軽症の妊娠高血圧性腎症を発症.管理入院としたが臍帯血流の途絶などみられ,妊娠22週5日胎児死亡に至った.児は245g(-3.5SD)であった.その後の腎シンチでは,両側の腎結石・片腎の機能低下を認め,妊娠高血圧との関連が考えられた.抗リン脂質抗体は陰性だが第12因子の低下を認めた.第3回妊娠:妊娠初期より低容量バファリンと未分画ヘパリンによる抗凝固療法を開始.妊娠32週現在,胎児発育に問題みられず.なお,これら3回の妊娠経過中,血液ガス分析にて明らかなアシドーシスは認められなかった.(結語)子宮内胎児死亡を繰り返したRTAの症例を経験した.RTAに伴う腎病変と,凝固因子異常が胎児死亡の原因と考えられた.RTAの病態が安定している場合でも,諸臓器の合併症に伴い多彩な妊娠合併症を来す可能性もあり,慎重な妊娠管理が必要であることが示唆された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
226-226, 2010
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