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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
合併症妊娠A ・妊娠に合併した炭酸リチウムによる腎性尿崩症を呈した1例
川嶋 章弘, 松田 秀雄, 吉田 昌史, 長谷川 ゆり, 吉永 洋輔, 浅井 一彦, 古谷 健一
防衛医科大学校産婦人科
【目的】リチウムは双極性感情障害の治療に広く使用されており,副作用として腎性尿崩症を来しうる.今回我々はリチウムによる腎性尿崩症を呈した躁うつ病合併妊娠の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.【症例】症例は40歳,0経妊0経産.25歳より躁うつ病および高血圧にて内服加療していた.自然妊娠し,妊娠初期より当院の妊婦検診を受診していた.妊娠22週0日躁症状の増悪に伴い,当院精神科に医療保護入院となった.入院後,口渇,高ナトリウム血症,高血漿浸透圧および1日尿量6L以上の多尿を認め,尿崩症の診断でdDAVPを投与開始,リチウムを内服中止とした.dDAVPを投与後も尿量が減少しないことから,臨床的に腎性尿崩症の診断となった.高ナトリウム血症,高血漿浸透圧に対して,5%ブドウ糖による補液および飲水にて対処した.幻覚,妄想および多動といった躁症状が増悪をみせ抗精神病薬の投薬が極量となるも精神症状の改善が得られなかったため,家族の書面による同意を得て妊娠25週よりm-ECTを9回施行した.精神症状はやや軽快し,一時抗精神病薬の内服を減量した.妊娠30週より再度精神症状の増悪を示し抗精神病薬の増量を行い,妊娠36週3日選択的帝王切開術を施行した.2700gの女児,アプガースコアは6点(1分値)8点(5分値)であった.児は無呼吸発作,けいれんを認め,離脱症候群の診断でクべースに収容しN-CPAPにて管理となった.【結論】リチウム内服する妊婦に口渇,多飲,多尿を認めた場合,リチウムに起因する腎性尿崩症の可能性がある.脱水および高ナトリウム血症などで管理に難渋した.このような症例においては厳重な管理が必要であると考える.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
226-226, 2010
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