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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
合併症妊娠A ・尿道憩室合併妊娠の1例
安藤 大史1), 菊地 範彦1), 小原 久典1), 長田 亮介1), 大平 哲史1), 芦田 敬1), 金井 誠2), 塩沢 丹里1)
信州大学産婦人科1), 信州大学保健学科2)
尿道憩室は傍尿道組織と腟前壁の間隙に尿道粘膜が突出することによって形成される.発生頻度は成人女性の1〜5%とされ若年女性の発症や妊娠に合併した症例は稀だが,巨大なものは経腟分娩の障害となることがある.今回我々は尿道憩室を合併した妊娠に対し,内容液の切開排液により憩室の縮小を行い経腟分娩に至った1例を経験したので報告する.症例は36歳の1回経産婦で妊娠12週頃より左外陰部から肛門にかけての疼痛が出現した.前医で経腟超音波にて腟前壁の嚢胞性病変を指摘され,妊娠34週2日に当科に紹介となった.腟前壁は腫脹し膀胱瘤に似た所見を呈し,腟前壁内に圧痛を伴う弾性軟で小鶏卵大の腫瘤を認め,超音波では径4.5cmの嚢胞性腫瘤であった.妊娠35週0日に施行したMRIでは,径5cm大で辺縁明瞭な嚢胞性腫瘤が尿道の左背側に存在し,嚢胞内容は尿とほぼ同信号であった.これらの所見から尿道憩室と診断した.妊娠36週2日に局所の疼痛が増悪し,嚢胞径も6cm大と増大したため,局所麻酔下に嚢胞壁を小切開し黄色の混濁した内容液を排出した.内容液はクレアチニン高値であり尿由来と考えられた.その後も再増大を認め,切開部の再開放を行ない嚢胞を縮小させた.妊娠39週5日に自然陣痛発来となり,2956gの女児を経腟分娩した.分娩経過中も嚢胞の破裂や通過障害の原因となることはなかった.分娩後も内容液貯留による嚢胞の再増大を繰り返し,疼痛が増悪するために産褥4日目に開窓術を施行し,その後は嚢胞の再増大はなく経過している.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
227-227, 2010
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