|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
合併症妊娠B ・妊娠中に発生した絞扼性イレウスの1例
兒玉 理, 小倉 剛, 中村 優子, 大原 玲奈, 中村 佳子, 小畠 真奈, 藤木 豊, 濱田 洋実, 吉川 裕之
筑波大学産婦人科
【はじめに】妊娠中に機械性イレウスを合併することは稀であり,本邦では1/3000〜1/10000との報告がある.その大半に開腹歴の既往があり,開腹歴のないものは1/100000と非常に稀とされる.妊娠中に発症するイレウスでは母体死亡率,胎児死亡率とも高く予後不良と報告されている.今回我々は,母体は救命したがIUFDとなった,開腹歴のない絞扼性イレウス合併妊娠の1例を経験したので報告する.【症例】33歳の未経産婦.妊娠26週5日強い腹痛,嘔吐を主訴に前医入院.明らかな炎症所見を認めず,切迫早産,常位胎盤早期剥離などの所見も認めず,児のwell beingは良好であった.絶食・補液のうえ,鎮痛剤投与で経過観察されたが,妊娠26週6日IUFDと診断された.精査加療目的に当院に緊急母体搬送となった.搬送時採血検査にて強い炎症所見を認めたが急速に分娩進行しつつあったため,まず児娩出の方針とした.児は980gの女児で剖検上,児・胎盤とも異常所見は認められなかった.娩出後,腹部造影CTにて回腸の絞扼性イレウスと診断された.緊急手術の方針となり,消化器外科に転科となった.手術所見は絞扼性イレウスによる腸管壊死で,腸管部分切除が施行された.術後経過良好にて退院となった.【考察】妊娠中のイレウスは稀ではあるものの,母体死亡率は10%前後,胎児死亡率は20〜40%程度と報告されハイリスクである.妊娠に伴う症状に似ているため診断が遅れがちであるとされるが,上腹部痛・嘔吐・便秘などを認め,妊娠特有の疾患が明らかではない場合はイレウスも念頭に置き,CTも考慮した積極的な検査が必要であり,診断がつき次第外科的治療を含めた早急な対応が不可欠と思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
230-230, 2010
|