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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
子宮内膜症・良性腫瘍 ・クロラムフェニコール局所投与により治癒した難治性Lipschutz潰瘍の1例
秋山 育美, 中村 泰昭, 落合 尚美, 中川 圭介, 矢部 慎一郎, 五十嵐 敏雄, 梁 善光
帝京大学ちば総合医療センター産婦人科
Lipschutz潰瘍は若年女性に好発する原因不明の外陰潰瘍性病変である.その報告は散発的なものが多く,治療法も確立されていない.今回我々は,約半年の間症状が持続し治療に苦慮したものの最終的にクロラムフェニコール局所投与が著効したLipschutz潰瘍の1例を経験したので報告する.症例は性交経験のない15歳の少女.外陰部の掻痒感・痛みを訴え近医受診し,外陰部潰瘍を指摘され抗ウィルス剤を投与されたが変化はなかった.その後自制のみで4ヶ月我慢し他医を受診した.外陰部所見は同様のため抗ウィルス剤投与するも改善せず,当科紹介受診した.外陰部腟後交連中心として広範囲に有痛性の潰瘍を認めた.潰瘍は月経前に悪化し,月経中には発熱・口内炎を認めた.腟培養,潰瘍部培養からは明らかな原因となる細菌は検出されず,HSV抗体も陰性であった.EBV,CMV抗体も陰性であった.CRPの上昇,鼠径リンパ節の腫脹も認めBehcet病や自己免疫疾患の存在も疑い全身検索を行ったが,HLA-B51陽性の所見はあったものの内科的疾患は否定的であった.潰瘍に対してステロイド外用薬を1週間局所塗布,さらに経口抗炎症剤を加え1週間継続したが改善を認めなかった.その後,抗アレルギー剤の内服に変更して1週間経過観察したが症状不変であった.このため,次策としてクロラムフェニコール腟錠の連日挿入とクロラムフェニコール・フラジオマイシン硫酸塩軟膏塗布に変更したところ,1週間後には著明に改善傾向を呈し3週間で潰瘍は完全に治癒した.その後も再発はなく経過は良好である.本症例の局所所見の経時的な変化を写真で示し,本症例に対するクロラムフェニコールの作用機序に関する考察も含めて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
236-236, 2010
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