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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
卵巣癌 ・集学的治療が奏効している若年者の成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化進行症例
朝田 嘉一, 多賀谷 光, 奈良 政敏, 端 晶彦, 平田 修司
山梨大学産婦人科
【症例】38歳 0経妊0経産.腹部膨隆を自覚し婦人科を受診した.MRI,CT検査で,骨盤内左側に造影効果のある壁在結節を伴う脂肪成分を含む径約14cmの腫瘤を認めた.その右側に径約7cm,さらに骨盤内右側に径約4cmの腫瘤を認めた.肺,肝実質に多発性充実性結節を認めた.SCC 42.73ng/mlと高値であった.両側卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化およびその遠隔転移が疑われた.子宮全摘,両側付属器切除,大網切除,腹腔内腫瘍切除術を施行したが,腫瘍の浸潤,癒着が強固で右尿管および外腸骨動静脈周囲と左骨盤壁に最大径3cmの硬結が残存した.病理所見は左卵巣成熟嚢胞性奇形腫の扁平上皮癌への悪性転化で,異型性のない扁平上皮から上皮内癌,浸潤癌への移行がみられた.右卵巣に転移を認め,他に切除した部位はいずれも播種病変を認めた.左卵巣癌stage IVにて,術後DP(DOC+CDDP)療法を開始した.腫瘍マーカーは正常値化し,6クール後のCT検査で,肺病変は消失していたが,肝周囲の病変に著変なかった.PET-CT検査で,傍大動脈リンパ節に集積を認めた.初回手術から7ヵ月後,骨盤内および傍大動脈リンパ節郭清,腹腔内残存腫瘍切除術を施行した.病理所見は,傍大動脈リンパ節に扁平上皮癌を認めたが,その他の部位では悪性細胞は認めず,壊死,線維化を認め,化学療法の治療効果を示していた.術後経過は良好で,DP療法を4クール追加し,現在無病生存中である.【考察】成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化は,高齢者に多く,術前診断は難しく,進行例では予後は極めて不良とされている.今回,集学的治療が奏効している若年者の成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化進行症例を経験したので報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
237-237, 2010
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