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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
卵巣癌 ・ジエノゲスト療法中に悪性化した卵巣子宮内膜症性嚢胞の一例
品川 光子, 浅香 亮一, 窪田 文香, 山田 香織, 高木 緑, 矢島 修, 高木 靖
諏訪赤十字病院産婦人科
卵巣子宮内膜症性嚢胞(以下チョコレート嚢胞)は約0.7%が悪性化するとされる.45歳以上,径6cm以上では,悪性化の可能性がさらに高まる.今回,ジエノゲストによりチョコレート嚢胞が一旦は縮小し,その後に癌化した症例を経験した.症例:48歳,0回経産.4年前に前医で子宮筋腫を指摘され,月経困難症が重症化したため当科へ紹介となった.MRIでは子宮腺筋症・多発筋腫・両側卵巣にチョコレート嚢胞(右26mm,左17mm)を認め,CA125;207U/ml,CA19-9;53U/mlであった.NSAIDsでは効果なく,ジエノゲスト(2mg/日)療法で少し症状が軽快し,その6ヶ月後の超音波検査で右チョコレート嚢胞の腫大を認めなかった.しかし,7ヵ月後にはCA19-9;253U/mlと高値を示し,CA125も166→237U/mlと再上昇した.8ヵ月後には右チョコレート嚢胞が4cmに腫大し,10ヵ月後のMRIやPET-CTで6cmの多房性嚢胞性腫瘤に集積を認めた.また,右腰痛が出現して軽度の水腎症を認め,右尿管ステントを挿入して手術を施行した.病理検査では右卵巣の内膜症病変から発生した類内膜腺癌(一部に明細胞腺癌)で,肉眼的にはIa期と思われたが骨盤リンパ節に転移を認めIIIc期と診断した.現在,補助化学療法(TC)を施行中である.本症例はジエノゲストによって6ヶ月間は症状やチョコレート嚢胞の所見が軽快していたが,その後に悪性化したと考えられ,たとえ経過良好であっても,常にチョコレート嚢胞の悪性化を念頭に置いた,注意深い外来管理が必要と考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
238-238, 2010
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