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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
婦人科治療 ・経皮的心肺補助装置(PCPS)によって救命しえた重症水中毒の1例
石田 友彦, 森田 豊, 内田 紗知, 室本 仁, 間瀬 徳光, 難波 直子, 竹内 沢子, 疋田 裕美, 上田 万莉, 山本 幸彦, 丸茂 元三, 大橋 浩文
板橋中央総合病院産婦人科
子宮鏡下手術中に重症な水中毒の症例を経験したので,その経過について報告したい. 55歳 4妊3産.約20年前にIUD挿入.約2ヶ月前から不正性器出血と軽度の腹痛を認めたため,当院を初診した.外来にて抜去を試みるも困難であった.そのため,文献的報告を参考にし,子宮鏡下でIUDを抜去する方針とした. ラリンゲアルマスクによる吸入麻酔下で,子宮鏡下にIUD抜去を試みた.子宮体部10時方向に埋没しているIUDの一部を確認した.周辺の子宮内膜を除去しIUDを突出させた後,ペアンを用いて抜去した.抜去直後より強出血を認めたため,凝固止血を試みたが困難であった.止血操作を繰り返していたところ,突然SpO2の低下が生じた.マスク換気で改善しないため,気管内挿管に変更したところ,大量の漿液が吸引された.急性水中毒と診断し,直ちに開腹術へ移行した.子宮穿孔はなく,子宮体部圧迫で出血は軽減したため,子宮全摘はせずに体部を縫縮するように縫合した.その間に血中Na値80mEq/l,Cl値60mEq/lと極めて重症な水中毒であると判明した.SpO2の改善がないため,経皮的心肺補助装置(PCPS)を挿入した.術後は循環動態の安定をはかりながら,電解質・酸塩基補正を行なった.大量出血によるDIC徴候に加え,ヘパリンによる出血傾向も出現したためPCPSを中断したが,徐々にSpO2は改善した.その後,Hb低下が進行したため,再開腹を行なった.2300mlの腹腔内出血があったが,明らかな出血源は不明であった.その後は集学的なDIC・肺水腫等の治療を行い,術後6日目に抜管し,12日目に無事退院となった.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
242-242, 2010
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