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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
胎児異常 ・胎児甲状腺腫の一例
大森 明澄, 佐藤 茉弥, 小出 馨子, 松岡 隆, 関沢 明彦, 岡井 崇
昭和大学産婦人科
精神・運動発達遅延の原因となる新生児甲上腺機能低下症は早期の治療介入を必要とする疾患である.今回,妊娠中に胎児頚部腫瘤を認め,臍帯穿刺で胎児甲上腺機能低下と診断し,早期娩出後に新生児治療を行った症例を報告する.[症例]25才 2G0P2KA[家族歴・既往歴]特記無し[現病歴]前医で妊娠初期に母体甲上腺機能亢進症と診断し妊娠11週よりPTUを投与開始したがコントロールがつかず,妊娠15〜21週にヨードカリウムを追加投与していた.妊娠26週の健診時に胎児頚部腫瘤を認めたため精査加療目的で当院紹介となった.入院時超音波検査で胎児前頚部に左右対称の血流豊富な腫瘤を認め,母体の治療経過と超音波所見により胎児甲状腺腫を疑い28週に臍帯穿刺施行した.結果はTSH:66.03,FT3:2.21,FT4:0.42で甲上腺機能低下による胎児甲状腺腫と診断を確定した.内分泌治療の確実性を優先し胎児治療を行わず早期娩出後の新生児治療の方針とした.また胎児嚥下運動の観察と羊水過多所見の無いことから出生時に呼吸障害や挿管困難は無いと評価した.妊娠30週0日選択的帝王切開で娩出,児は1541g,男児,apgar7/9,NICUにて新生児治療開始し後速やかに甲上腺機能が改善,甲状腺腫も縮小し経過順調である.[考察]胎児期の甲上腺機能低下症は胎児治療と新生児治療との選択に苦慮する.羊水中にレボチロキシンを投与し胎児甲状腺腫様が縮小した報告もあるが,投与量や治療効果判定には内分泌的モニタリングが必須であり,児の成熟度によっては早期に娩出し新生児治療が有効であると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
245-245, 2010
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