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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
産科感染症 ・梅毒感染妊婦7例の周産期予後と問題点に関する検討
水主川 純, 中西 美紗緒, 桝谷 法生, 定月 みゆき, 五味淵 秀人, 箕浦 茂樹
国立国際医療研究センター戸山病院産婦人科
【目的】本邦では妊娠初期の梅毒スクリーニング検査が推奨され,母子感染による先天梅毒の予防が行われている.梅毒感染妊婦(以下,梅毒妊婦)に関する検討を目的とした.【方法】2006年1月から2009年12月に当科で分娩した梅毒妊婦7例を対象とし,周産期予後と問題点を検討した.【成績】母体平均年齢は26.7歳,初産婦4例,経産婦3例,全例,未婚であった.全例,梅毒血清反応にて診断された無症候性梅毒で,診断時期は妊娠中5例(A群),分娩後2例(P群)であった.2例がクラミジア,1例がC型肝炎ウイルスの感染を合併した.早産2例,帝王切開4例(適応:NRFS2例,骨盤位,既往帝王切開が各1例)であり,周産期死亡はなく,低出生体重児4例,先天梅毒2例,乳児院保護3例を認めた.A群の産科初診時平均妊娠週数は19.8週,3例は初診後も不定期に受診し,梅毒治療開始時平均妊娠週数は31.0週であった.A群は,全例,正期産となり,帝王切開2例,低出生体重児2例であったが,先天梅毒を認めなかった.P群は,未受診妊婦(妊娠31週相当)と妊娠初期だけの不定期受診妊婦(妊娠34週)であり,いずれも救急外来受診後に緊急帝王切開を要し,術後,梅毒罹患が判明した.P群からの出生児2例は,いずれも低出生体重児,先天梅毒と診断され,胎盤病理組織標本にて多数のTreponema pallidumを認めた.【結論】当科の梅毒妊婦は産科初診が遅延傾向にあり,その背景に出産・養育環境が整わない状況での妊娠がうかがえた.産科初診の遅延や不定期受診に伴い,治療開始も遅れた.特に未治療症例は早産となり,先天梅毒を発症しており,梅毒スクリーニング検査は重要であると考えられた.性教育や妊婦健診受診に関する啓発活動を強化し,予防できる周産期リスクを回避すべきである.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
251-251, 2010
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