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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
産科感染症 ・病理解剖により全身リステリア菌感染の所見を呈した胎児感染の1例
彦坂 慈子, 堀井 真理子, 真島 実, 漆原 知佳, 秋谷 文, 熊耳 敦子, 酒見 智子, 塩田 恭子, 齊藤 理恵, 佐藤 孝道
聖路加国際病院女性総合診療部
Listeria monocytogenesは自然界に常在する菌の1種である.ヒトへは汚染された食肉,乳製品,生野菜などの摂取により腸管から感染し,食中毒を引き起こす.しかし食中毒にもかかわらず急性胃腸炎症状は呈さず発熱,インフルエンザ様症状が初発症状になる.健常者が発病することは稀で,高齢者,免疫抑制状態の患者,妊婦,乳幼児,新生児などが感染し全体の致死率は約30%と高いことが知られている.今回,母体リステリア敗血症の垂直感染により子宮内胎児死亡に至った胎児の病理解剖により組織学的所見を得た貴重な症例を経験したので報告する.【症例】妊娠20週5日胎動消失と10日前からの発熱を主訴に来院した.来院時体温38.8度,全身倦怠感および子宮収縮を自覚していた.血液検査は炎症反応の著明な上昇を認め,超音波にて子宮内胎児死亡を確認した.自然に分娩進行し児娩出となったが,児は外表奇形なく浸軟していた.母体はABPC/SBT投与開始し産褥1日目より解熱傾向を得た.母体の血液培養および胎盤組織の細菌培養よりListeria monocytogenesが検出された.子宮内胎児死亡の原因検索のため病理解剖を施行し,組織所見にて肺および甲状腺,舌,腎臓に至る全身臓器に好中球の集簇と組織壊死を認めた.胎盤は強い絨毛膜羊膜炎および胎盤膿瘍の所見を認めた.【考察】妊婦はリステリア菌に感染しやすく重症化しやすいため,食品摂取方法を工夫し感染予防を啓蒙すること,感染徴候のある妊婦に対してはリステリア菌感染も念頭において対処する必要があることを再認識した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
252-252, 2010
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