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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
産科感染症 ・産褥4日目に急激に発症したA群β溶血性連鎖球菌による敗血症の1例
真島 実, 堀井 真理子, 彦坂 慈子, 漆原 知佳, 秋谷 文, 熊耳 敦子, 酒見 智子, 塩田 恭子, 齊藤 理恵, 佐藤 孝道
聖路加国際病院女性総合診療部
【緒言】A群β溶血性連鎖球菌は口腔内,皮膚の常在菌ではあるが,稀に劇症型A群溶連菌連鎖球菌感染症を発症.発症した場合,高率に不幸な転帰をたどることが知られている.今回我々は,産褥期にA群β溶血性連鎖球菌による敗血症を発症.迅速な診断と抗菌薬治療により劇症型に至らず,良好な転帰をたどった1例を経験したので報告する.【症例】36歳,初回妊娠.IUI妊娠.妊娠前より白衣高血圧を指摘.妊娠36週頃より血圧上昇があり,妊娠高血圧症候群の診断で妊娠40週5日に分娩を誘発.降圧薬による血圧コントロールを行いつつ,同日経腟分娩.女児,Apgar score 1分値9点.産後,降圧薬の内服で血圧は安定.産褥4日目,定時の内診1時間後に,突然の四肢の振戦と悪寒,軽度の意識障害を認めた.バイタルサインは,体温:36.7℃,脈拍:111回/分,血圧:154/94mmHg,呼吸:30回/分,SPO2:97%,症状から子癇発作,敗血症を疑い,抗けいれん薬を使用すると共に,迅速に抗菌薬投与を開始.発症1時間後に体温:39.9℃まで上昇したものの,発症3時間後に症状は改善.発症12時間後には解熱が得られた.翌日,血液培養からはGroup A Streptococcus(Streptococcus pyogenes)が検出され,A群β溶血性連鎖球菌敗血症であったことが明らかになった.【結語】症状,バイタルサインより早期に敗血症を予測.迅速な初期治療により劇症型の発症を予防し得たと考える.感染症治療において,早期の適切な抗菌薬使用が重要であることが示された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
253-253, 2010
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