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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
合併症妊娠C ・妊娠を契機に再生不良性貧血の増悪を認めた1例
浅野 涼子, 助川 明子, 元木 葉子, 鈴木 理絵, 杉浦 賢, 榊原 秀也, 平原 史樹
横浜市立大学産婦人科
【背景】再生不良性貧血は汎血球減少をきたす骨髄疾患であり,妊娠に合併することは非常にまれである.今回我々は再生不良性貧血を合併し,妊娠経過中に貧血,血小板減少の増悪を認め,周産期に輸血療法を行い正常経腟分娩に至った1例を報告する.【症例】27歳,0経妊0経産.妊娠5カ月前に健診で血小板減少を指摘,骨髄穿刺の結果,軽症の再生不良性貧血と診断され,当院血液内科で経過観察中であった.妊娠直前の末梢血液所見はHb12.2g/dl,血小板数6.9万/μLであった.その後自然妊娠し,妊娠7週6日より当科管理となる.妊娠経過が進むに従い徐々に貧血,血小板減少が進行し,妊娠32週でHb6.8g/dlとなり,外来で赤血球2U単位を2回輸血した.妊娠37週で血小板数1.3万/μLまで減少したが,頻繁な輸血による抗血小板抗体の産生を予防する目的で,分娩直前に血小板輸血を行う方針にした.39週3日前期破水のため入院,同日陣痛発来し,血小板20単位輸血した後,経腟分娩に至った.児は2604g(AFD)女児,Apgar Score 9/10点,分娩時出血は279gであった.産後経過は母児共に良好であり,貧血,血小板減少の増悪は無く,分娩後6日目に退院した.産後1カ月後の採血ではHb8.6g/dl,血小板数5.1万/μLと,貧血,血小板減少は分娩後徐々に改善傾向にある.【まとめ】今回我々は妊娠により症状が増悪した再生不良性貧血合併妊娠の1例を経験した.再生不良性貧血は妊娠を契機とした発症,増悪の報告があり,注目されている.重症の場合は母体の出血,敗血症のリスクが高く,胎児においては子宮内胎児発育遅延や子宮内胎児死亡を起こしうるため,妊娠中は厳重な管理が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
256-256, 2010
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