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<< 学会誌へ戻る 【緒言】卵巣チョコレート嚢胞は，時として破裂をきたし急性腹症の誘因となるが，妊娠中に症状をきたすことは稀である．今回，妊娠後期に急性腹症を認め，常位胎盤早期剥離との鑑別に苦慮したチョコレート嚢胞破裂の一例を経験したので報告する．【症例】30歳0経妊，自然妊娠．妊娠初期に経腟超音波で右卵巣に7cm大のチョコレート嚢胞と思われる腫瘤を認めたが，その後は縮小傾向がみられたため経過観察とした．妊娠31週5日，子宮収縮に伴う子宮頚管長短縮のため切迫早産の診断で入院管理し，塩酸リトドリン投与により症状の改善をみた．しかし，妊娠32週1日，下腹部痛が出現．超音波で明らかな胎盤肥厚や血腫はみられないものの，触診上子宮は板状硬であり，CTG上variabilityは認めるもののaccelerationに乏しく，常位胎盤早期剥離の可能性も否定できないため緊急帝王切開を施行した．子宮は硬く収縮していたが色調の変化はなく，茶褐色の腹水を認めた．1972gの児（AP7/8点）を娩出．胎盤には明らかな早期剥離所見はなく，右卵巣の破裂所見を確認した．卵巣嚢胞核出後，腹腔内を洗浄のうえ手術終了．母体は経過良好で術後7日目に退院となった．【結語】卵巣チョコレート嚢胞は妊娠中にホルモン動態の変化により嚢胞が縮小するといわれており，妊娠中に破裂をきたした報告は極めて少ない．本症例では，妊娠初期にチョコレート嚢胞を認めていたが，その後は捕捉困難であったことや破裂時の臨床所見・CTG所見が常位胎盤早期剥離と類似していたことより，術前の鑑別が困難であった．後方視的見解ならびに病理学的所見に加え，文献的考察を交え，妊娠中のチョコレート嚢胞破裂のメカニズムについて報告する． 日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2) 258-258, 2010 |
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