|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
妊娠合併症 ・妊婦健診で前置血管を疑い,入院のうえ妊娠分娩管理を行ない生児を得た1例
河原井 麗正, 木村 博昭, 井尻 美輪, 江口 修, 小林 治, 神山 正明
国保君津中央病院産婦人科
【緒言】前置血管はWharton膠質に覆われない脆弱な臍帯血管が卵膜下を走行し内子宮口付近に存在する病態を指す.破水前に診断されないと前置血管は破綻して胎児は大量出血するため新生児死亡率は60%にも達する.今回我々は,妊婦健診外来のエコーで妊娠中期より前置血管を強く疑い,入院のうえ妊娠分娩管理を行ない生児を得た1例を経験したので報告する.【症例】24才,経腟分娩による1経産.自然妊娠て妊娠5週より当科に通院していた.妊娠16週,20週の時点で子宮後壁側に付着する低置胎盤と内子宮口付近に存在する臍帯を認めた.妊娠27週,30週になると,臍帯付着部位が内子宮口に近い胎盤の辺縁もしくは卵膜にあり,さらに,臍帯が内子宮口上を跨ぐように子宮全壁側に走行するのがわかるようになったため前置血管を疑い,自宅安静を指示しさらに妊婦健診の間隔を2週に1度から1週に1度とし,より厳重に管理した.妊娠31週5日より入院とし,塩酸リトドリン点滴静注を65.4μg/minで開始した.同日よりベタメタゾン12mg/day筋注を2日間実施した.妊娠33週6日,23時より腹部緊満を訴え,胎児心拍陣痛モニターで規則的な子宮収縮を認めた.これ以上の妊娠継続は無理と判断し,脊髄くも膜下麻酔にて緊急帝王切開を行なった.妊娠34週0日,1908gの女児を娩出させた.胎盤を観察すると,臍帯は卵膜付着であり17cmにわたって臍帯と付随する血管が卵膜上を走行していた.当然ながら血管の破綻は認められず.母児ともに術後経過問題なし.【考察】前置血管を早期に診断するには,妊娠早期での臍帯付着部位の確認と,内子宮口付近の臍帯もしくは臍帯血管の時間的経過を詳細にフォローすることが重要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
260-260, 2010
|