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第119回学術集会(平成22年6月13日(日))
【一般演題】
悪性腫瘍A・婦人科感染症 ・術前の診断が困難であった腹膜偽粘液腫の一例
横田 めぐみ, 小野 政徳, 井上 陽子, 上原 一朗, 服部 純尚, 倉橋 崇, 中川 博之
国立病院機構埼玉病院産婦人科
【緒言】腹膜偽粘液腫は虫垂や卵巣を原発とし,発生頻度は100万人に1例の稀な疾患である.今回我々は術前の画像検索では診断が困難であった腹膜偽粘液腫を呈した1例を経験したので報告する.【症例】46歳 2経妊2経産3ヶ月前より下腹部膨満感を認めていた.検診時の経腹超音波断層法にて13cmの骨盤内多房性腫瘍を認め,精査目的に当院紹介となった.初診時,CA19-9 14.8U/ml,CA125 41.9U/ml,CEA 6.5ng/ml.画像検査にて卵巣腫瘍と診断され,手術施行した.腹腔内はゼリー状粘液が500g貯留していた.左卵巣は15cmに腫大し,腹腔内と同様の粘液が充満し一部被膜破綻していた.右卵巣は3cm大も,同様の粘液貯留を認めた.腹膜,臍部,横隔膜にも同様の腫瘍を認めた.左卵巣の迅速病理診断は境界悪性粘液性腫瘍であった為,単純子宮全摘出術,両側付属器切除術,大網切除術,腹膜切除術,腫大を認めた虫垂切除術を施行した.肉眼的に腹腔内残存腫瘍は認めなかった.温生食10,000mlにて洗浄し終了した.最終病理診断は,両側付属器及び虫垂の両方に病変が見られる腹膜偽粘液腫の診断であった.良好経過にて術後12日目に退院し,後治療を検討中である.【結語】本症例は術前検査では腹膜偽粘液腫の診断はできなかった.しかし術後MRIの再検討にて,虫垂の腫大を疑う所見を確認し得た.本疾患は完全切除が予後規定因子である.症例によっては外科との連携も必要であり,術前に予見しておくことが充分な治療につながる.腹水を認める卵巣腫瘍の際には本疾患も念頭に置く必要があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(2)
269-269, 2010
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