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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
優秀演題賞候補(婦人科2) 卵巣癌―腹膜播種症例―に対する後腹膜リンパ節郭清の意義
久慈 志保, 安部 正和, 高橋 伸卓, 武隈 宗孝, 樋田 一英, 平嶋 泰之
静岡県立静岡がんセンター婦人科
【目的】卵巣癌に対する後腹膜リンパ節郭清は,進行期の決定に必要な手技として位置づけられているものの,治療的意義は確立されていない.今回,腹膜播種をみとめた進行卵巣癌症例に対する後腹膜リンパ節郭清の意義について検討した. 【方法】2002年10月から2008年12月までに,腹膜播種陽性と診断された卵巣癌症例(腹膜癌は除く)に対して手術を行い,残存腫瘍が10mm以下となった56症例を,後腹膜リンパ節郭清を行った群(P群)と行わなかった群(N群)にわけ,両者の予後について比較検討した. 【成績】観察期間の中央値は35ヵ月(8-82ヵ月)であった.P群,N群はそれぞれ29例,27例であった.進行期の内訳(III/IV期)は,P群:25/4例,N群:17/10例であった.組織型の内訳(漿液性+類内膜腺癌/その他)は,P群:22/7例,N群:21/6例であった.P群・N群とも,再発例の初回再発部位は70%が腹膜播種であり,死亡例の直接死因は80%が腹膜播種であった.両者のPFS,OSは,どちらも有意差を認めなかった(p=0.869,0.419).次に,手術終了時に肉眼的残存腫瘍を認めなかった症例(P群:24例,N群:14例)について検討したが,PFS,OSともに有意差を認めなかった(p=0.634,0.196).また,初診時の画像評価でリンパ節転移を認めた症例について検討した(P群:8例,N群:12例)ところ,PFSでは有意差を認めなかったが(p=0.292),OSではN群が有意に延長していた(p=0.036). 【結論】腹膜播種陽性の症例は,手術によって後腹膜リンパ節の制御を行っても予後に寄与しない可能性があり,リンパ節郭清を行う際には慎重に症例を選択する必要があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
307-307, 2010
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