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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
子宮内膜症 後腹膜原発子宮内膜症性嚢胞の1症例
尾崎 景子1), 山本 晃人1), 峯 克也1), 明楽 重夫1), 鴨井 青龍1), 川本 雅司2), 竹下 俊行1)
日本医科大学産婦人科1), 日本医科大学病理2)
子宮内膜症性嚢胞は主に卵巣に発生し,他部位に嚢胞性の子宮内膜症を認めることは稀である.今回我々は,後腹膜に発生した子宮内膜症性嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は,42歳,0回経妊,0回経産.検診にて骨盤内腫瘤を指摘され,当院紹介となった.内診にてダグラス窩に小児頭大の腫瘤を触知した.MRIでは約12cm×12cm×15cmの多房性嚢胞性病変を認め,内部に一部造影効果を伴う不整な充実部分を含み,悪性腫瘍が疑われた.腫瘍マーカーはCA125が299.8 U/mlと上昇を認め,卵巣癌と診断し開腹手術を施行した.術中所見では,子宮および両側卵巣は正常大で,腫瘍との連続性は認めなかった.腫瘍は単房性嚢胞が多数連なるように存在し,その基部は子宮左側後腹膜より発生していた.嚢腫の摘出術を行ない,病理組織検査にて子宮内膜症性嚢胞と診断した.本症例は骨盤内後腹膜原発の子宮内膜症性嚢胞であり,術前検索において卵巣原発腫瘍との鑑別が非常に困難であった.また,発生部位も骨盤後腹膜であり,非典型的な症例と言える.この様な異所性子宮内膜症の発生機序には諸説あり,一定の見解を得ない.KoninckxらおよびDonnezらの提唱した,胎生期の遺残組織から発生するとの説は有名であるが,近年では月経血の経卵管的移植説,またはエストロゲンや種々の因子による化生・誘導説が有力である.今回,それらの文献を元に各種免疫組織染色を行い,腫瘍発生母地に対する検索を行った.本症例における臨床診断および免疫染色を含む術後病理診断に関して若干の文献的考察を加えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
315-315, 2010
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