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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍2 卵管間膜内に発生した境界悪性傍卵巣腫瘍の2例
市川 麻祐子, 土谷 聡, 松本 陽子, 川名 敬, 西嶌 優子, 中川 俊介, 大須賀 穰, 百枝 幹雄, 矢野 哲, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学医学部附属病院女性外科
傍卵巣嚢腫はほとんどが良性腫瘍であり,付属器腫瘍の10〜20%を占める.多くは内面平滑であるがしばしば隆起性病変を認めることがあり,悪性腫瘍との鑑別が問題となる.今回我々は超音波検査およびMRIにて嚢胞内腔に隆起性病変を伴う境界悪性傍卵巣腫瘍を2例経験した.1例目は36歳0経妊0経産.6年前より卵巣腫瘍と診断され手術を勧められたが通院中止していた.その後検診で再度卵巣腫瘍と診断され,超音波検査・MRIで内壁の広い部分に高さ5mm程度までの造影効果を伴う多数の隆起性病変を認め,当科紹介受診となった.超音波検査で正常な右卵巣が認められ傍卵巣嚢腫疑いとされたが,悪性の可能性を否定できず開腹での腫瘍摘出術を行った.病理診断でserous papillary cystic tumor of borderline malignancy of the right mesosalpinxとされた.2例目は28歳3経妊0経産.1年前より80×30mm大の右付属器腫瘍を認め,1ヶ月前にMRIで腫瘍の増大と1例目と同様の隆起性病変を認めたため当科紹介受診となった.超音波検査・MRIで正常な右卵巣が認められ傍卵巣嚢腫疑いとされた.悪性の可能性を否定できず開腹での腫瘍摘出術を行った.摘出した嚢胞内腔には乳頭状の結節が多数存在し,病理診断でserous borderline tumor in paratubal lesionとされた.組織学的所見では,いずれも嚢胞上皮は一部乳頭状の増殖があり細胞の核腫大が目立つものの,間質への浸潤は明らかではなかった.傍卵巣腫瘍は大部分が良性腫瘍で,かつ画像上しばしば隆起性病変が散見される.しかし,本症例のようにMRIで造影効果を伴う隆起性病変を認めた場合は,境界悪性以上の可能性も考慮して治療にあたる必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
318-318, 2010
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