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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍2 遠隔転移をきたした卵巣粘液性腺癌pT1a期の2例
荒川 敬一, 松本 陽子, 有本 貴英, 土谷 聡, 織田 克利, 川名 敬, 中川 俊介, 大須賀 穣, 百枝 幹雄, 矢野 哲, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学医学部付属病院産婦人科
【緒言】卵巣粘液性腺癌は卵巣癌の12%程度を占め,再発・進行癌症例では,化学療法に抵抗性を示し,治療に苦慮することが多い.今回,我々はpT1a期でありながら遠隔転移をきたした卵巣粘液性腺癌の2例を経験したので報告する.【症例】症例1は74歳女性,卵巣腫瘍および上行結腸癌に対し,2009年10月両側付属器切除術・大網部分切除・右半結腸切除術が施行された.卵巣粘液性腺癌Stage1aと上行結腸腺癌stage2aの重複癌と診断された.追加治療なしで経過観察となるが,2010年2月より背部痛出現,4月にCTで多発骨転移,副腎への転移が確認され,CTガイド下生検で卵巣癌再発と診断された.緩和的照射およびTC療法1コースが施行されたが,5月には新たな多発骨転移が認められた.6月には多発肺転移も出現し,呼吸不全にて永眠された.症例2は65歳女性,2007年11月に近医より後腹膜腫瘍の疑いで当院泌尿器科を紹介受診.泌尿器科における開腹手術にて術中卵巣癌と診断されたため,当科で単純子宮全摘・両側付属器切除・大網部分切除・骨盤および傍大動脈リンパ節郭清が施行された.病理診断は粘液性腺癌(一部に神経内分泌癌を有する混合癌)であり,pT1aN1と診断された.術直後のCTにて多発骨転移,肺転移が認められたため,Stage IVの診断となり,TC療法を8コース施行,続いて維持療法としてTC療法を6週間隔で5コース施行後PDと診断された.胸膜転移による疼痛に対し緩和的照射を施行後,近医での緩和治療を希望され転院となった.【結論】卵巣粘液性腺癌の場合,pT1症例でも遠隔転移を来たし,予後不良なことがあるため,全身的な検索に注意し,緩和ケアを含めた早期の適切な対応が必要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
319-319, 2010
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