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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩2 急性膵炎を契機として糖尿病性ケトアシドーシスから子宮内胎児死亡を来した1例
大川 直子1), 内田 季之1), 堀越 義正1), 仲谷 傳生1), 田島 浩子2), 小林 友季子1), 中村 友紀1), 平井 久也1), 鈴木 一有1), 杉原 一廣1), 伊東 宏晃1), 金山 尚裕1)
浜松医科大学産婦人科1), 県西部浜松医療センター産婦人科2)
【緒言】糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は,インスリンの欠乏によりアシドーシスと高血糖・血管内脱水が生じている状態である.今回我々は,妊娠中にDKAを発症し,子宮内胎児死亡(IUFD)に至った症例を経験したので報告する. 【症例】27歳0経妊,既往歴・家族歴に特記事項なし.無月経となり某医で妊娠と診断され,定期健診を受けていた.妊娠12週時,随時血糖148 mg/dl,尿糖(-)であった.妊娠25週0日,尿糖陽性となり,体重66kg,以後尿糖は持続した.27週頃より嘔気・倦怠感出現し徐々に口渇・多尿を伴った.妊娠31週より連日補液を受けるも症状改善なく,体重は59.7kgに減少した.31週2日,IUFDとなり当院へ緊急搬送された.来院時著明な脱水,血糖852 mg/dl,HbA1c8.5%,U-ket(2+),Amy 655 IU/lであった.大量補液,持続インスリン静注を開始しつつ分娩を誘発し31週3日,1764g女児を死産した.産後血糖200 mg/dl前後と安定したが,意識障害(JCS I-2)をきたした.CTにて著明な膵臓腫大を認めたことから,急性膵炎を契機として,DKA,高度脱水,腎前性腎不全となりIUFDに至ったと診断した.産褥7日腹部MRIにて左心,上腸間膜静脈,門脈内に血栓症を認めた.心エコーでタコつぼ型心筋症の所見を認めた.ワーファリン内服開始し,速やかに血栓は溶解した.インスリンは不要となり産褥39日目に退院となった. 【考察】DKAからIUFDに至った症例を経験した.妊娠中に血糖値の上昇を示唆する所見を見逃さず早期に適切な評価と治療を行うことが重要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
328-328, 2010
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