|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩4 妊娠中に急性増悪を来したHBVキャリアの一例
櫻橋 彩子, 田口 歩, 大垣 洋子, 中西 美紗緒, 折戸 征也, 水主川 純, 桝谷 法生, 定月 みゆき, 五味淵 秀人, 箕浦 茂樹
国立国際医療研究センター産婦人科
【緒言】HBVキャリア妊婦は約1.6%と比較的高頻度であるが,妊婦での急性増悪例は極めて稀であるとされている.妊娠初期にB型慢性肝炎の急性増悪を来たし,エンテカビル内服にて状態を安定させ,分娩に至った症例を経験したので報告する.【症例】36歳,3経妊2経産.27歳時,妊娠を契機にHBVキャリアと判明,以降高ウイルス量持続(HBV DNA>7 log copies/ml),HBe抗原陽性,軽度の慢性肝炎を認めるも状態は安定しており,前2回出産時(28歳,32歳)母子感染は認めなかった.今回は妊娠13週時,全身倦怠感・食欲低下・尿の濃染出現,トランスアミナーゼ高値(AST 2386 U/L,ALT 1309 U/L),高ビリルビン血症(T-bil 3.6mg/dL)を認め,慢性肝炎の急性増悪と診断した.核酸アナログ製剤内服に伴うリスク(催奇形性,変異株出現,服薬中断による再増悪)等説明の上,劇症肝炎予防のため妊娠13週6日よりエンテカビル0.5mg 1T/day投与した.服薬後数日で全身状態改善し,2週間後ウイルス量減少(HBV-DNA 7.6→4.6 log copies/ml)4週間後トランスアミナーゼ値も正常化したため,服薬中止による再増悪のリスクはあったものの30日間でエンテカビルを中止した.その後再燃なく,妊娠39週3日2950gの児を正常分娩,児への垂直感染は認めなかった.【考察】エンテカビルは長期内服することが一般的であるが,今回は劇症肝炎予防のため短期間の内服し,満期に生児を得た.妊娠に伴う免疫寛容等の変化が今回の急性増悪に関与した可能性も考えられる.ウイルス量がHBV-DNA 5.5〜6.0 log copies/ml以上になると肝炎の活動性が高まるとされるため,そのような例においては厳重な周産期管理が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
331-331, 2010
|