|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩4 妊娠中HIV感染により惹起された血小板減少症に対しHAART療法が奏功した一例
渋谷 剛志, 松田 秀雄, 吉田 昌史, 吉永 洋輔, 川嶋 章弘, 浅井 一彦, 渡邊 昭夫, 宮本 守員, 古谷 健一
防衛医科大学校産婦人科
【背景】HCV感染症,H. Pyrori感染,HIV感染などの感染症によって免疫学的機序で血小板が減少することがある.これらの血小板減少症に対しては原疾患の治療を行うことでの改善もしくは寛解を得ることが多いとされている.今回我々はHIV感染妊婦においてHighly Active Anti-Retroviral therapy(HAART療法)を施行することにより,血小板の正常化を得た症例を経験したので報告する.【症例】32歳,7経妊4経産,妊娠27週でHIV抗体陽性,血小板減少を認め当院紹介受診した.初診時HIV-1 RNA 11,000 copy/ml,CD4 311/μl,血小板6.9万/μlであった.今回の妊娠で初めてHIV感染が判明した.他の感染症は認めなかった.妊娠28週よりHAART療法(AZT 400mg,3TC 300mg,LPV/r 800mg)を開始した.妊娠30週にはHIV-1 RNAは270 copy/ml,CD4 437/μlとなり,またLPV/rの血中濃度の増加に伴い,血小板増加を認めた.妊娠34週6日に破水,緊急帝王切開術を施行した.この時点で母体HIV-1 RNA 190copy/ml,CD4 446/μl,血小板12.3万/μlであった.娩出された児は2172g,男児,アプガースコア1分値8点,5分値9点,HIV-1 RNA陰性,血小板29.6万/μlであった.胎盤は特記すべき所見はなかった.児に対する予防治療として生後6週までAZTを投与した.1ヶ月健診において母体血小板13.6万/μlと低下を認めなかった.【結語】本症例はHIV感染妊婦に対してHAART療法を行うことで分娩時の血小板数の正常化を認めた.文献的考察を交えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
332-332, 2010
|