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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩5 卵巣癌再発を放置して妊娠を継続した結果,「母体救命搬送」された一例
鮫島 大輝, 山田 学, 尾崎 倫子, 西舘 野阿, 濱村 憲佑, 笠井 靖代, 宮内 彰人, 安藤 一道, 石井 康夫, 杉本 充弘
日本赤十字社医療センター産婦人科
【緒言】患者の自己都合転院に際して既往卵巣癌の情報が伝わらなかったため,帝王切開後にショック状態で当院へ母体搬送となった症例を報告する.【症例】39歳0G0P.2年前にA病院で右卵巣腫瘍に対して右付属器切除を受けた.病理診断は成熟嚢胞性奇形腫の腺癌への悪性転化でstage1c(b)であった.追加治療も術後検診も受けなかった.術後1年で自然妊娠し,B病院で妊婦健診を受けていたが,妊娠28週に14cmの腹部腫瘤が認められ,A病院に紹介された.精査加療を勧められたが本人が拒否した.その後紹介なしにC病院を受診.既往歴を卵巣境界悪性腫瘍と自己申告したが,同院では再発腫瘍を診断されなかった.妊娠36週3日に胎児機能不全の適応での緊急帝王切開により,1970gの児をApgar8点で娩出した.その際腹水700mlと腹腔内腫瘍を認めた.腫瘍切除せずに手術を終えたが,術後の血圧低下と乏尿のため当院へ搬送された.CTで子宮の左頭側に長径24cmの充実性腫瘍と大量の右胸水,左副腎・左肋骨の腫瘤,傍大動脈リンパ節腫大を認めた.左卵巣腫瘍とその転移を疑った.右胸腔穿刺,輸血等を行ったが,胸水産生と全身浮腫が持続するため,搬送3日後に左付属器切除を行い,2.6kgの卵巣腫瘍を摘出した.病理診断は低分化腺癌で,既往手術標本との検討で卵巣癌の再発と診断した.胎盤にも癌浸潤を認めた.11日間のICU管理の後,本人の希望で後療法なしに搬送22日後の退院した.【結語】妊娠中の腹部腫瘍は,増大した子宮のために発見が困難になることがあるが,本症例では本人の受診拒否や病院間の連携不足も重なり,重症化した状態で発見された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
334-334, 2010
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