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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩5 妊娠後期に統合失調症が増悪し,電気けいれん療法で改善を認め満期産に至った一例
神尊 貴裕, 北 麻里子, 兵藤 博信, 小松 篤史, 吉田 志朗, 大須賀 穣, 亀井 良政, 藤井 知之, 上妻 志朗, 武谷 雄二
東京大学女性診療科・産科・女性外科
【緒言】電気けいれん療法は精神疾患急性期に早期の効果を期待され行われる治療である.機序については不明な点も多いが,妊娠中の治療成功例も少なからず存在する.【症例】32歳初産.19歳で統合失調症を発症,3回の医療保護入院歴がある.精神科主治医の管理のもと抗精神病薬を中止後に妊娠,初期・中期は近医産婦人科にて管理され経過は良好であった.30週5日頃より精神症状が急速に増悪し,31週6日に当院精神科を受診.受診時,意思疎通はとれず,抑制が必要な状態であり,医療保護入院となった.精神科と協議し,電気けいれん療法を行う方針とした.32週1日より,修正型電気けいれん療法(mECT)を週3回,計9回施行した.術中は,予防的に子宮収縮抑制剤の投与を行い,胎児心拍数陣痛図の装着,軽度の左側臥位とした.合併症としては子宮収縮,胎児不整脈,母体血圧低下,SpO2低下等を認めたが,いずれも軽度で,それ以外にも中止が必要なものは認めなかった.精神症状は施行する毎に改善し,妊娠37週で一時退院となった.妊娠38週2日で前期破水のため分娩誘発し,同日頭位経腟分娩となった.分娩中の精神症状は安定していた.2854g,Apg:8/9児は一過性多呼吸,黄疸を認めたが,1ヶ月検診までに異常を認めていない.患者は分娩当日より不眠が出現し,徐々に精神症状が増悪,産褥5日目に精神科へ転科しmECT再開となった.【結語】mECTを妊娠後期に施行し,母児ともに重篤な合併症なく精神症状を改善できた1例を経験した.その機序や長期的な児の予後は不明であるが,妊娠中の精神疾患急性期治療において,一つの選択肢になると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
334-334, 2010
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