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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩6 生体肝移植後,妊娠中期より腎機能障害と高血圧を来し妊娠29週で早産となった一例
嘉本 寛江, 梁井 葉子, 吉田 志朗, 兵藤 博信, 亀井 良政, 藤井 知行, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学医学部附属病院産婦人科
【緒言】本邦において肝移植件数は年々増加し,その約60%は0歳〜30歳代に施行されている.昨今,肝移植後の妊娠分娩の報告は多数あり,良好な結果を得られた報告も多い.一方で,妊娠高血圧症候群,胎児発育不全,早産,胎児機能不全,分娩後の出血などのリスクが高いことが報告されている.今回,生体肝移植後7年で自然妊娠し,加重型妊娠高血圧腎症の増悪により妊娠29週で分娩となった症例を経験したので報告する.【症例】21歳1経妊0経産.14歳時に原因不明の劇症型肝炎に対し,兄をドナーとする生体肝移植を施行.翌年に肝静脈形成術,脾臓摘出術施行.以後肝機能の増悪・寛解を繰り返していた.今回,自然妊娠し,妊娠時はタクロリムス,メチルプレドニゾロン内服で肝機能は正常だった.妊娠15週に肝機能障害が出現しタクロリムスを増量,19週には肝機能は改善したが20週より腎機能が悪化し,タクロリムスを減量した.一旦腎機能は改善したが,高血圧,尿蛋白,腎機能の悪化のため,妊娠29週3日に帝王切開術で分娩した.腎機能は術後2日より,高血圧は術後7日より,徐々に改善した.児は1214g,ApgarScore7/9.NICUに入院したが大きな合併症なく,日齢55に退院した.授乳中もタクロリムスの内服は継続したが,児の血中濃度は感度以下だった.【まとめ】肝移植後の妊娠は肝機能そのものに対するリスクの他,免疫抑制剤内服に伴うリスクも伴う.また,高血圧,腎機能障害などが出現する可能性もある.今回,移植外科,内科,小児科との連携による妊娠,分娩管理が有効であったと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
337-337, 2010
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