|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩6 妊娠中に総腸骨静脈から大腿静脈に深部静脈血栓症を認めた1例
都築 陽欧子, 中島 義之, 千葉 純子, 草西 多香子, 諸岡 雅子, 本田 能久, 坂井 昌人, 正岡 直樹
東京女子医科大学八千代医療センター母性胎児科
妊娠中の深部静脈血栓症発症は非妊娠時よりの血液凝固障害,経口避妊薬服用,肥満などが危険因子とされる.今回,下肢静脈の先天的な低形成に起因する妊娠時深部静脈血栓症の1例を経験したので報告する. 症例は27歳初産婦.妊娠23週より歩行時の左大腿痛を認め,超音波検査にて左総腸骨静脈から大腿静脈まで連続する血栓を認めたため,紹介入院となった.入院時身長152cm,体重58kgで,妊娠前の喫煙,避妊薬服用,静脈瘤などの既往はなかった.入院時,D-dimer 3.29μg/ml,抗リン脂質抗体症候群など認めず,肺塞栓症を疑う所見はなかったが,MRI angiographyでは,左総腸骨静脈から大腿静脈まで血栓の充満が確認でき,さらに浅大腿静脈から膝窩静脈にかけて微小血栓の存在が疑われた.妊娠子宮による下大静脈の圧迫のため,分娩前の肺塞栓症発症の危険性は低いと判断し,分娩前に一時的下大静脈フィルターを挿入し,管理分娩を行う方針とし,抗凝固療法を開始した.妊娠36週に一時的下大静脈フィルターを挿入した後,妊娠37週に分娩誘発し,2,990gの男児Apgar score 1分後8点(5分後9点)を経腟分娩した.産褥経過は順調であり,分娩後造影CTにて肺塞栓症および下肢深部静脈血栓症を認めなかったため,産褥7日目に下大静脈フィルターを抜去した.分娩2ヵ月後の造影CTでは,左総腸骨静脈から外腸骨静脈は瘢痕状で描出されず,仙骨前面から内腸骨静脈系への側副血行路が発達しており,大腿静脈から外腸骨静脈内の微小血栓の残存を認めた.造影CTの結果から,本症例においては,左総腸骨静脈から外腸骨静脈にかけての先天的な静脈の低形成が原因となり,妊娠を契機に深部静脈血栓症を発症したと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
338-338, 2010
|