|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩8 底部前壁筋腫が原因で後屈妊娠子宮嵌頓症となり子宮後壁横切開で分娩に至った1例
中村 泰昭, 神尊 貴裕, 中澤 明里, 中川 圭介, 矢部 慎一郎, 五十嵐 敏雄, 梁 善光
帝京大学ちば総合医療センター産婦人科
妊娠初期の子宮は約15%が後屈しているが,妊娠16週までには自然整復され前屈となると言われる.このため後屈妊娠子宮嵌頓症の発症頻度は1/3000-10000と極めて稀である.今回我々は頸部筋腫による分娩障害の診断で帝王切開術を施行したものの,実際は子宮底部筋腫のダグラス窩嵌頓により生じた後屈妊娠子宮嵌頓であることが術中に判明し,結果的に子宮後壁横切開で児娩出を行っていた症例を経験したので報告する.症例は33歳の初産婦.健診を契機に筋腫を指摘され精査目的で紹介初診となった.MRI上,底部前壁に6cm大の漿膜下筋腫を認め子宮は強く後屈していた.2ヵ月後に自然妊娠したが,妊娠初期より子宮頸部は触知困難であり,妊娠成立前のMRI診断と異なり頸部筋腫合併妊娠とこの頃には診断された.妊娠10カ月の内診でも子宮頸部は上方に著しく偏位し腟鏡診でも同定不能であり後壁頸部筋腫と思われた.MRIでも同様の画像であり経腟分娩は困難と判断し選択的帝王切開の方針とした.開腹所見では膀胱が著しく上方に挙上され子宮前面の2/3を覆っていた.膀胱を下方へ圧排し,子宮下節と思われた部分を横切開して横位の児を娩出した.ところが児娩出後に子宮を腹腔外に挙上して確認したところ筋腫は底部前壁から派生しダグラス窩に嵌頓していたものと判明し,下節と思って切開した部分が実は左側広間膜を貫通して後壁を切開していたことが明らかとなった.後屈妊娠子宮嵌頓症は未診断・未治療の場合に重篤な副作用を呈する可能性が否定できない.子宮後屈の妊娠においては嵌頓子宮である可能性を念頭に入れ,周産期管理,分娩方針決定を行うことが重要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
342-342, 2010
|