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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
妊娠・分娩8 ハプトグロビン欠損症合併妊娠の分娩管理に対する考察
松本 玲央奈, 保谷 茉莉, 梁井 葉子, 永松 健, 兵藤 博信, 大須賀 穣, 亀井 良政, 藤井 知行, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
【緒言】ハプトグロビン欠損症の頻度は日本人では約4000人に1人である.多くは無症状であり,健診などで偶然発見されるケースが多い.しかし,輸血時においては,アナフィラキシー・ショックが報告されている.輸血後アナフィラキシー・ショックの原因として,日本人ではハプトグロビン欠損症によるものが最も多い.今回ハプトグロビン欠損症合併妊娠を経験した.分娩準備について考察を加え,報告する.【症例】30歳,2経妊0経産.23歳時,献血のスクリーニングでハプトグロビン欠損症と指摘された.これまで症状は特になかった.28歳時,子宮外妊娠手術の際,輸血を行ったが,洗浄赤血球を使用して問題なく経過した.今回,自然妊娠.他院で妊婦健診を受けていたが,33週時,切迫早産のため入院.33週4日切迫早産の症状が増悪したため,NICUのある当院へ母体搬送となった.36週3日,輸血部技師不在の夜間に陣発したが,順調に進行し,36週4日経腟分娩となった.出血量は55mlであった.【結語】ハプトグロビン欠損症患者に対しての輸血においては,生理食塩水による洗浄赤血球や,洗浄血小板の輸血を行うことにより抗ハプトグロビン抗体の産生が回避され,アナフィラキシーショックを免れることが報告されている.しかしながら,洗浄赤血球の入手にあたっては,血液センターにあらかじめ注文するか,もしくは技師による操作が必要である.そのうえ,洗浄赤血球の使用期限は24時間と短い.そのため分娩準備として,自己血貯血が有効と考えられる.今回は順調な分娩で,輸血は不要であったが,ハプトグロビン欠損症合併妊娠の患者に対しては,早い段階から,計画的な管理が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
342-342, 2010
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