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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))

【一般演題】
婦人科感染症・炎症性疾患
卵巣成熟嚢胞性奇形腫の破裂による反復腹膜炎で大網切除を要した1例


島田 智聡, 品川 光子, 窪田 文香, 山田 香織, 高木 緑, 矢島 修, 高木 靖
諏訪赤十字病院産婦人科


【緒言】卵巣成熟嚢胞性奇形腫(dermoid cyst)は良性卵巣腫瘍の30%を占め,日常よく遭遇する疾患だが,自然破裂は1.3%と稀である.破裂により漏出した腫瘍内容物により,化学性腹膜炎を生じるが,術中破綻でも遺残があれば生じ得る.今回,dermoid cystの自然破裂による汎性腹膜炎を発症し,手術療法にて,一旦は軽快したにも関わらず,2ヶ月後に再燃し,大網腫瘤を形成したため再開腹術を要した症例を経験した.【症例】68歳,未経妊,右腎癌の精査中,以前より自覚していた下腹部腫瘤が消失し,数日後に発熱や嘔気が出現し,CRP;27 mg/dlで,マーカーはCA19-9;41U/ml,CA125;95.8U/ml,SCC;3.6ng/mlと上昇を認めた.MRIで右卵巣腫瘍内や腹水に脂肪信号を認め,dermoid cystの破裂による腹膜炎と診断し,両側付属器切除術と温生食(15L)で徹底した腹腔内洗浄を施行した.術後1週で解熱・軽快し,1.5ヶ月後には右腎癌手術を施行した.しかし,2ヶ月後に腹膜炎が再燃し,CTで腹膜播種像に似た上腹部腫瘤を認め,診断目的で再開腹した.大網腫瘤(omental cake状)と広範囲の腹腔内癒着を認め,大網部分切除の病理検査からは脂肪肉芽腫性腹膜炎であった.【考察】自然破裂だけでなく,腹腔鏡下卵巣腫瘍手術でも腫瘍内容の漏出機会が多いと推測される.本症例では多量のdermoid cyst内容が拡散したまま経過し,十分な腹腔内洗浄でも遺残は防げなかった.特に大網部には残留しやすく,早期手術に加え,癒着防止剤を併用した大網切除の追加が根治性を高める可能性がある.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3) 355-355, 2010


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