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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
腹腔鏡下手術 当科における単孔式腹腔鏡下手術の現況
長坂 貴顕, 中江 華子, 藤本 晃久, 大須賀 穣, 矢野 哲, 武谷 雄二
東京大学医学部産婦人科
【目的】単孔式腹腔鏡下手術は,従来の腹腔鏡下手術に比べ特に美容面で優れていると考えられるが,術後疼痛,早期回復等について十分なエビデンスが得られていない.当科では,2010年2月より卵巣嚢腫に対する腹腔鏡下手術の一部の症例において単孔式腹腔鏡下手術を導入してきた.これまでにこの手術を施行した8症例において,手術時間,術後疼痛等につき検討した.【方法】手術適応として,漿液性・粘液性卵巣嚢腫,又は皮様嚢腫に限定し,大きさは8cm以内,また術者は一人に限定した.臍部を2.5cm切開し,SILSポートを挿入後気腹,ロティキュレーター鉗子1本と通常のパワーソースを用いて手術を行った.そして,1.手術時間,2.出血量,3.38℃以上の発熱期間,4.CRP値の上昇,5.鎮痛剤の使用回数,6.食事・歩行開始時期,7.術後感染・他臓器損傷等につき検討した.【結論】対象とした単孔式腹腔鏡下手術は,卵巣嚢腫摘出術4例(26歳〜31歳;平均30.0歳),付属器切除術4例(50歳〜55歳;平均53.5歳)であり,1.90.6±30分,2.7例で少量,1例のみ100ml,3.6例で0日,2例で1日,4.CRP値の上昇を認めたのは4例(最大2.60mg/dl),5.4例で0回,最大6回,6.食出しは術後1-2日目,歩行開始時期は全例術後1日目,7.術後感染・他臓器損傷は認めなかった.今回の検討は単孔式手術の導入期でもあるため,術者を1名に限定し,適応症例を充分限定して扱ったが,この範囲においては単孔式腹腔鏡下手術の有用性が示唆された.但し,単孔式手術を行う上では,鉗子操作が制限を受けること等のデメリットもあるため,通常の腹腔鏡下手術に充分熟練した術者の下で適応拡大は慎重に行うべきであると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
359-359, 2010
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