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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
術後合併症とその予防 腹式単純子宮全摘術後腹腔内出血に対し子宮動脈塞栓術を施行し止血を得た一例
羅 ことい, 石川 智則, 宮坂 尚幸, 尾林 聡, 久保田 俊郎
東京医科歯科大学医学部附属病院周産女性診療科
【緒言】子宮動脈塞栓術は比較的迅速かつ低侵襲に施行でき,子宮筋腫や産褥出血の治療に用いられる.今回我々は,抗リン脂質抗体症候群で抗凝固療法中であり,腹式単純子宮全摘術後腹腔内出血をきたし,子宮動脈塞栓術で止血した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.【症例】47歳,0経妊0経産.既往に特記すべきことなし.過多月経を主訴に当科を受診した.著明な貧血と骨盤CTで6cmの粘膜下筋腫を認めたため,GnRH agonist 1.88mgを投与後に手術を行う方針とした.抗リン脂質抗体症候群および慢性心不全,肺高血圧症を合併しており,ワーファリン内服中であったため,術前にヘパリン化を行い,全身麻酔下に腹式単純子宮全摘術を施行した.摘出子宮は178g,術中出血は151mlであった.バイタルサインを確認し手術2時間後からヘパリン投与を再開した.術後26時間より胸部不快感を訴え,頻脈および貧血の進行を認め,腹部超音波断層法で腹腔内に液体貯留を認めた.腹腔内出血を疑い撮影した腹部CTで内腸骨動脈分枝から造影剤の漏出が確認され,子宮動脈塞栓術を施行した.塞栓術後再出血はなく,全身状態良好となり術後14日目に退院した.【結語】子宮動脈塞栓術は,婦人科手術における子宮動脈からの術後出血に対応できる比較的低侵襲な止血法である.開腹手術よりも血管アクセスが容易であり,一度の塞栓で止血できなかった場合にも,繰り返し塞栓を行うことにより止血が可能であるといわれている.本症例のように術後出血をきたし,動脈性の出血であることが明確な場合に,迅速に対応できる有効な方法である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
362-362, 2010
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