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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
異所性妊娠 妊娠27週に腹腔内出血で発症した単角子宮副角妊娠の症例
前山 哲朗, 小畠 真奈, 岩城 真奈美, 加藤 敬, 小倉 剛, 小貫 麻美子, 沖 明典, 濱田 洋実, 吉川 裕之
筑波大学産婦人科
単角子宮の副角への妊娠は非常に稀な異所性妊娠であり,76,000妊娠に1回の頻度とされている.画像診断の進歩により早期診断例が増加,外科的治療により母体予後は改善しているが,妊娠全期間を通じて約50%の子宮破裂のリスクがあり,生児を得る可能性は極めて低い.今回我々は,腹腔内出血で発症し,生児を得た単角子宮副角妊娠の症例を経験したので報告する.症例は23歳の1回経産婦,既往歴として13歳の時に左腎の欠損を指摘されている.妊娠5週より近医にて管理されていた.妊娠26週2日上腹部痛と嘔気が出現し妊娠27週3日より総合病院にて精査,腹膜炎の疑いにて妊娠27週4日当院母体搬送入院となった.入院時血液検査にてHb 8.1g/dlと貧血を認めた.超音波検査では腹腔内に多量の腹水と羊膜腔(胎児,胎盤,羊水),非妊娠子宮を認め,骨盤腔内に多房性嚢胞を認めた.子宮頸部は一つであり完全双角子宮への妊娠と卵巣腫瘍破裂が疑われた.腹水と卵巣腫瘍の鑑別診断のためにMRIを施行したところ,腹腔内妊娠あるいは単角子宮の副角妊娠と腹腔内出血が疑われ,多房性嚢胞は仙骨前面の成熟嚢胞性奇形腫と診断された.全身麻酔下に緊急開腹手術施行をしたところ,多量の腹腔内出血,筋層が菲薄化した妊娠子宮と非妊娠子宮を認め,副角子宮妊娠切迫破裂と診断,子宮体部縦切開にて児娩出した.児は851gの女児であり,NICU入院となった.母体は分娩後の精査において仙骨変形が認められ,腎泌尿器奇形,子宮奇形,仙骨前面腫瘤の徴候から,クラリーノ症候群が疑われた.腎泌尿器奇形がある場合,子宮奇形の検索と妊娠初期における妊娠部位の確認が重要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
370-370, 2010
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