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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
胎盤・臍帯 妊娠後期の胎盤機能不全の原因と対応
有澤 正義
東京都立大塚病院産婦人科
【目的】胎盤機能不全が合併すると胎児の発育不全,羊水過少を合併することが多い.臨床的に,near termあるいはtermで胎児が少し小さい,羊水が少し少ないなどの胎盤機能不全を疑った時の管理について,胎盤病理と臨床のout comeを明らかにし,今後の臨床に役立てたい.【材料】2010年1月1日から2010年6月30日まで509件の分娩があった.その内271件は胎盤の病理検査がなされた.【結果】胎盤病理で胎盤機能不全と診断したものは43件あった.病理的には胎盤へのメコニュウムの沈着,臍帯のワルトンジェリーの減少,絨毛の凝集,絨毛内血管の閉塞,絨毛間質の線維化,未熟絨毛,羊膜結節であった.羊膜結節のあった例はAFIが2.2cmと高度の羊水過少を合併していた.出生前の超音波で,絨毛の虚血性病変や未熟絨毛を疑った例があった.臨床的には,母体の耐糖能異常,後期発症の妊娠中毒症,羊水過少,胎児発育不全,分娩時の胎児仮死が認められた.胎児死亡,新生児死亡に至った例はなかった.【考察】胎盤病理で明らかになった原因は,胎児の低酸素状態をまねく血管病変である.慢性の低酸素状態として,羊水過少や胎児発育不全は,今までの報告と同様である.急性の変化としては低酸素状態になった胎児は,胎内で便を排出し,胎盤,臍帯の血管を攣縮させ,子宮内環境を悪化させ,胎児仮死を合併していた.胎児発育不全を伴っていれば分娩を考慮することが望ましいと考える.Termあるいはnear termになると,羊水量は減少するので,それだけで分娩とすることは難しい.AFIが3cmを切ることや胎盤の質的な診断を考慮することが重要であると考えた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
375-375, 2010
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