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第120回学術集会(平成22年11月28日(日))
【一般演題】
産褥 帝王切開術後血栓塞栓症予防目的低分子量ヘパリン投与の安全性―未分画ヘパリンとの比較―
渡辺 尚, 薄井 里英, 泉 章夫, 桑田 知之, 松原 茂樹, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
当施設では2001年4月より,ヘパリン投与不適当と判断した症例以外の帝王切開症例全例に対して,術後静脈血栓塞栓症予防目的で低用量未分画ヘパリン投与を行ってきたが,2009年10月より,低分子量ヘパリン投与へ変更した.2009年7〜9月の帝王切開術施行症例148例中,未分画ヘパリンが投与された140例と,2009年10〜12月の帝王切開術施行症例135例中,低分子量ヘパリンが投与された131例とを比較し,低分子量ヘパリン投与の安全性について検討した.帝王切開術後血栓塞栓症予防に用いる抗凝固薬の変更前後3か月間で比較した結果は,1)臨床的に明らかな静脈血栓塞栓症は双方で発症がなかった,2)出血事象発現例は未分画ヘパリン投与例で2例(1.4%),低分子量ヘパリン投与例で2例(1.5%)と発症率には差はなかったが,低分子量ヘパリン投与例では2例とも軽症例であった,3)APTTは両群とも術前値に比べ,術後・薬剤使用後に有意な延長を認めたが,低分子量ヘパリン投与例では未分画ヘパリン投与例に比べて延長率が低く,40秒以上の症例も少なかった.日本産婦人科新生児血液学会で実施した分娩後肺血栓塞栓症発症時期の調査(1991〜2000年)において「肺血栓塞栓症発症は分娩後1日目が最も多く,3日目までの発症が92%」という結果であったことを考慮し,当施設では,低分子量ヘパリン投与を,術前に説明し承諾を得た上で,帝王切開術後24時間経過してからではなく,手術直後から開始している.今回の検討結果より,手術直後より独歩の翌朝までの低分子量ヘパリン投与は,未分画ヘパリン投与と比較して,出血のリスクは増加しないことが推測される.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(3)
378-378, 2010
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