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【症例報告】
子宮内胎児死亡となり,癒着胎盤のため子宮全摘となった糖尿病性ネフローゼ症候群の1例
乙刀@雅子1), 内田 季之1), 田島 浩子1), 矢田 大輔1), 望月 亜矢子1), 小林 友季子1), 中村 友紀1), 平井 久也1), 谷口 千津子1), 鈴木 一有1), 杉原 一廣1), 伊東 宏晃1), 有澤 正義2), 金山 尚裕1)
1)浜松医科大学産婦人科, 2)都立大塚病院産婦人科
症例は36歳2経妊2経産婦.29歳の第一子妊娠中に妊娠糖尿病(真性の2型糖尿病)と診断され,インスリン治療を開始した.妊娠36週5日帝王切開にて2,600 gの男児を娩出した.33歳で第二子を妊娠し重症妊娠高血圧腎症を発症したため,妊娠36週5日に帝王切開にて2,100 gの男児を分娩した.産後も継続してインスリン治療を強く勧められたが,34歳以降は自己判断により外来に通院していなかった.約2年後に無月経となり,某医を受診して妊娠10週と診断された.同医における初診時,尿蛋白(++++),尿糖(++),HbA1c 7.5%であった.妊娠12週に当科に紹介された.重度の蛋白尿,低蛋白血症,低アルブミン血症,高血中総コレステロール血症を認め,糖尿病性のネフローゼ症候群と診断された.直ちにインスリン療法を再開するとともに,患者・家族の強い希望により妊娠を継続することとなった.しかし,患者は定期的に外来を受診せず,妊娠25週4日性器出血にて救急外来を受診して子宮内胎児死亡と診断され,妊娠26週2日416 g女児を死産した.分娩後24時間以上経過しても胎盤が娩出しなかったため超音波検査ならびに造影MRI検査を施行したが癒着胎盤の確定診断は得られなかった.充分なインフォームドコンセントを得て,輸血を準備して全身麻酔下で胎盤娩出を試みたところ,多量の出血が始まったため,直ちに開腹して子宮全摘術を施行した.開腹時所見ならびに病理所見から穿通胎盤であった.
Key words:pregnancy, diabetes, placenta accreta
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(4)
431-435, 2010
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