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【特集】
Methotrexate(MTX)の全身投与が有用であった帝王切開瘢痕部妊娠の1症例
濱田 佳伸, 東 昭宏, 市村 建人, 栗田 郁, 山本 篤, 飯塚 真, 林 雅綾, 安藤 昌守, 榎本 英夫, 坂本 秀一, 林 雅敏
獨協医科大学越谷病院産科婦人科
帝王切開瘢痕部妊娠(帝切瘢痕部妊娠)は既往帝王切開瘢痕部に着床する稀な疾患であるが,大量出血や子宮破裂の危険性があり,母体死亡につながる疾患である.本邦でも近年の帝王切開頻度の上昇に伴い,増加している.今回,我々は,経腟超音波断層法,MRIによって帝切瘢痕部妊娠と診断し,methotrexate(MTX)の全身投与による保存的治療を行って子宮温存しえた症例を経験したので報告する.症例は32歳女性.6経妊3経産.帝王切開3回.続発性無月経を主訴として受診した.最終月経より54日目に経腟超音波断層法で子宮峡部に胎嚢を認め,骨盤部MRIで同部位の子宮筋層の菲薄化を認めた.帝切瘢痕部妊娠と診断し,MTX 50 mg/m2/週の全身投与を2週施行した.MTX投与前の尿中hCG値は24,430 mIU/mlであった.投与後,胎嚢は消失し,尿中hCG値も陰性化した.本症例は治療開始前の尿中hCG値が高かったが,MTXの全身投与が奏効した.帝王切開の既往のある妊婦に対しては,妊娠初期から本疾患を疑って,経腟超音波断層法による帝切瘢痕の評価が必要と思われた.
Key words:cesarean scar pregnancy, methotrexate
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 47(4)
465-468, 2010
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