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【症例報告】
高度の子宮留血症,出血性ショックをきたした子宮内膜未分化肉腫の1例
大森 真紀子, 端 晶彦, 多賀谷 光, 和田 麻美子, 奈良 政敏, 平田 修司
山梨大学医学部産婦人科
子宮原発の肉腫は稀な悪性腫瘍である.今回われわれは高度の子宮留血症,出血性ショックという特異な経過を示した子宮内膜未分化肉腫の1例を経験したので報告する.症例は65歳,2経産.急速な腹囲の増大と下腹痛を主訴に近医を受診した.高度の子宮留血症が認められ,検査中に突然ショックとなり当科に救急搬送された.前医でのCT検査で数個の筋腫と内腔に突出する8 cm大の腫瘤が認められた.当院来院時には,性器出血はみられなかったが子宮口よりカテーテルを挿入し,暗赤色の血液2,050 mlを吸引したところ,子宮出血が増加したため緊急手術(単純子宮全摘,両側付属器切除術)を行った.子宮は約1 kgで,組織学的には上皮様配列に乏しい大型で多形核を有する細胞と核小体の目立つ紡錘形細胞が浸潤性に増殖し,核分裂像が目立っていた.急変染色の結果をあわせ,子宮内膜未分化肉腫と診断した.入院時に子宮内に貯留していた血液を検体として細胞診検査を行ったところ,壊死性背景に核形不整で核小体の目立つ異型細胞が散在性に認められ,肉腫が強く疑われる結果であった.術後に化学療法を施行したが1年3か月後に多発肺転移が認められ,さらに化学療法,放射線療法を行ったが,手術から2年4か月後に死亡した.本症例のように短期間のうちに高度の子宮留血症,出血性ショックをきたす子宮肉腫の症例はまれだが,緊急時の診断において,子宮内に貯留した血液の細胞診検査も有用な手段の一つとなりうることが示された.
Key words:uterine neoplasms, endometrial stromal tumors, endometrial sarcoma, hematometra, cytology
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 48(1)
41-48, 2011
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