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【特集】
ラマン分光法を用いた婦人科腫瘍組織の解析
倉崎 昭子1), 福田 麻美1), 山本 泰弘1), 櫻井 信行1), 田岡 英樹1), 浅川 恭行1), 横内 幸2), 大原関 利章2), 高橋 啓2), 久布白 兼行1)
1)東邦大学医療センター大橋病院産婦人科, 2)同 病院病理部
ラマン分光法は,励起されたレーザー光を対象物質に照射することによって生ずる被照射物質の特異的散乱光を計測するものである.ラマン分光法によって得られるスペクトルは被照射物質の分子構造を反映し, in vivoでの分析にも適していることから,臨床医学において腫瘍の良性・悪性の診断などへの応用が試みられてきた.しかし従来,ラマン分光法の生体組織への応用は,レーザー照射の際に発生する蛍光ノイズのため困難であった.今回我々は新たに作製された1,064 nm波長のラマン分光システムを用いて,婦人科腫瘍組織の解析が可能か検討した.本解析システムでは,発生するラマン散乱光の検出器を改良することによって,従来のものに比べ高感度で蛍光ノイズの無いスペクトルが得られた.対象は東邦大学医療センター大橋病院にて手術施行した摘出検体で,子宮頸部組織3検体,悪性卵巣腫瘍組織15検体である.測定条件はNd:YAGレーザーの励起波長1,064 nmで,試料上のスポットサイズは約100 μmである. その結果,正常子宮頸部組織ではアミドI, CH2 bending,アミドIIIとよばれる3種のピークが明瞭に検出された.悪性卵巣腫瘍については,子宮頸部組織と同様に3種のピークが検出され,同一個体の癌部分と非癌部分でピークの波形に差異が認められた.以上の結果から,1,064 nm波長Nd:YAGレーザーのラマン分光システムを用いて,婦人科腫瘍組織の解析が可能であることが示唆された.
Key words:Raman spectroscopy, 1064 nm excitation, Nd:YAG laser, Gynecologic tumor
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会誌, 48(1)
57-61, 2011
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